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帝国劇場 ミキサー 本間 俊哉 |
帝国劇場は1966年の開場当時からラジオマイクを使用しており、当初VHF帯から始まり1980年代後半のUHF帯、1994年の電波法改正からは現在のFPUの2,4へと変遷して参りました。 さて、皇居前に当劇場がございます関係上、ラジオマイク運用上の一番大きな問題は、冬季に行われるマラソンの中継車とのFPU共用です。過去何回かにわたり、各放送局様にご協力いただき、中継車劇場前通過時の干渉状態のテストを行ないました。結果、通過時の干渉の影響が大きいことがわかりました。また理論上は大丈夫だと思われたケースでは、劇場前で停車時は全く問題がなくても、走行時には大きな干渉を受けることもわかりました。また私共が使用しております送信機が人体に装着されていることや、また動きのある俳優に装着した状態がほとんどで、送信機の送信状態が悪くなった瞬間に著しく干渉ノイズが発生することも確認できました。このノイズについては、何回か特ラ連にも提出させていただきましたが、割とすさまじい音になります。中継車の通過時間はケースバイケースですが、1分以上続くことはあまりなく、干渉時間は40秒程度です。しかしながら、ラジオマイクの技術向上による安定度とお客様の音に対する捉え方も昔とはだいぶ変化しており、ノイズに対して非常に評価が厳しくなってきております。たとえ20秒でも起きる可能性のあるノイズを見逃すわけにはいかない現状はどの現場でも同様でしょう。 このため、改正以降は特ラ連からの運用連絡をいただいた時点で、それに基づいて各マラソン担当放送局様との事前打ち合わせを行わせていただくことが必須となり、お互いの運用に影響の無いよう、ご協力いただき共用運営させていただいております。 ここで、去年11月に行われた東京女子国際マラソンを例にとって、マラソン中継に関しての現場状況をレポートさせていただきます。 特ラ連からFAXで連絡頂いた後、劇場音響としては以下のような準備をいたします。 |
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これがマラソン中継本番日までの劇場音響側の実態です。毎回このような運を天に任せた瀬戸際の状況です。実際、中継車が通過時の影響は、94年電波法改正以来、過去数回経験いたしておりまして、たとえ20秒間でもシーンによっては重大な影響を作品に及ぼすこともあり、何回か干渉ノイズが客席に流れたこともございます。そのようなときには劇場のお客様から苦情をいただきます。しかしながら、「本日マラソン中継がありまして…」というような言い訳は当然通用いたしません。毎年このシーズンになると胃が痛くなると言うのが現在の状況でございます。 加えて、ハイビジョン中継についても言及しなければなりません。FPU1から4まで全帯域を使用するハイビジョン中継の場合には劇場側で対処することがお手上げの状況です。今までは、FPUの2,4のうちどちらかの空きチャンネルで逃げることが可能でしたが、全帯域が中継のために使用されるので今までの手法では通用しません。そしてこの度初めて、この経験を2月に行われます東京国際マラソンでいたします。B帯を準備しておりますが6波のみで対処しなければなりません。幸いなことに今回のマラソン中継本番当日は、その時間帯に本公演がなく、たまたまクリアできる状況でした。しかしながら、放送局様も新しいハイビジョン中継テストをしなければならない状況がありまして、マラソン本番日以前に何日かテストをするとの連絡を受けました。そこで劇場前での停波を陳情したりテスト時間帯をずらしていただいたりしてテスト日をなんとかクリアできるようにお話し合いさせていただいている最中でございます。 最近、携帯電話では新しい800MHz帯や1GHzを超える帯域が新たに割り当てられる状況なのに対し、その経緯は異なりますが、業務用ラジオマイク帯域に関して今のところ改善の余地がないことがとても残念でなりません。多くの海外諸国についてラジオマイクシステムへの電波帯域が、充分な波数を取れる状況に対して、日本のそれはあまりにも貧弱だと思われます。10年前、遠いことと思われていたハイビジョン放送、ハイビジョン中継が技術革新とともに現実となり、現状ではFPUの共用ということが難しくなった時点で、新たな運営方法が再検討されなければならない時期と存じますが、皆様はいかがお考えになるでしょうか? 今回のレポートは、私共劇場がたまたま皇居前にあるという特別な環境下であることが、このような偏った意見になるのかもしれません。がしかし、近い将来、異なった現場で、同様な問題が起こるのではないかと私は懸念しております。これからも特ラ連から配信される運用連絡をもとに他の現場の方々との連絡をなおいっそう密にし、共に運営していく中で、新たな方策が産み出されれば幸いと存じます。 |
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