座談会 「現場技術者大いに語る」
その3
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◇イヤ−・モニタ−用ラジオマイクについての意見は
司会 ところで日本でもイヤ−・モニタ−用ラジオマイクという名称で使えるようになったんですが、10mWということで、それを保証するためにアンテナ分散を可能ということにしたわけです。金森さんミュ−ジカルでも使うんですか。
金森 実はもうそろそろ使いたいんです。しかし、ビジュアル的な問題がありそうで。
司会 付けないよりはあった方がいいですか。
町山 ぼくが懸念していたのは、イヤモニはステレオですし、ステレオは電波が飛ばないんですよね。飛ばないから出演者や演出家を説得できるかどうかという問題があります。
 それとサイズの問題もあるんです。出演者がハンドマイクの時はいいんですが、仕込みの時はすでにトランスミッタ−を一つ持っているわけですから、それにモニタ−の受信機をつけるとなると体中につけることになり、それだけでもかなりの重量ですしね。
金森 イヤモニを理解してくれるのは売れているミュ−ジシャンじゃないかな。いい音楽を作ろうとするとやはり必要でしょうね。しかしイヤモニは絶対だ、といって先走りしてしまうと……
町山 だから確実なところで進めばいいんですが、変に過大評価されたり過少評価さ<れたりすると困りますね。
井野 アメリカで使っているから絶対いいんだという感覚で……ね。ウォ−クマンのような感覚で使われるとこわいんですよ。あれは補助ですからね。
金森 イヤモニタ−が市場にでてきてそのまま使うとかなり問題があると思うんです。まあハウリングだけだったらいいんですが、レシ−バ−に発信しているワイヤレスの電波が飛び込んでくるとものすごいノイズになるんですよ。耳をダメにするくらいの…。そういったことの理解を完全にしておかなければならないこと。コンプレッサ−かけてリミッティングしてから送信機へ送るにも相当の注意が必要ですね。
町山 今までのコンサ−トなどはプリ送りで問題はなかったんですが、あゝいうのを付けますとプリで送っておけばいいというものではなくなってしまいます。舞台のソデに入った時などには、はずしてくれればいいんですが……
金森 これからイヤモニを使おうという人たちは外タレなどのやり方を十分見て知っていると思うんですが、かなりこまかいことをやらないといけないと思うんです。現在イヤモニを使っている人をみると、ポストで返す方法ばかりですし、それとハウスなみのイフェクタ−がないと処理できないですよね。
町山 イヤモニは絶対使うようになると思いますが。
金森 十二分に注意して使わないと鼓膜をこわしたとかで訴訟問題が起きるとか、そういうことはあり得ると思います。
町山 ハンドマイク1本にイヤモニ1個だけだから問題ないでしょうといっても、例えばギタ−のトランスミッタ−が近付いたらどういうことになるか、それによってどのような問題が起きるかとか、受信機を銅箔でカバ−してとか、ハンドマイクが近付いても大丈夫な処理が必要じゃないですか。
町山 チュ−ナ−をただ重ねていると干渉しているんですよね。間に銅板一枚敷いたりすると受信感度とか、ダイバシティの動きとかについてはクリアな状態になるんですよ。
金森 そのあたりはかなり経験していないと……
町山 これはちょっと違うはなしですが、アンテナをいっぱい立てればいいや、という人がいるんですが、気になりますね。
金森 干渉するとアンテナを強くする人もいますしね。基本を知らない証拠ですよね。逆にそういう場合はブ−スタ−をはずす、というのがぼくらの鉄則ですから。外来が入ったらブ−スタ−をはずす、というのが………。ところがオペレ−タ−というのは怖くてそれが出来ないんですよ。ブ−スタ−をはずすと弱くなりますから。実は逆でして、それをやらないと外来には勝てないんです。
司会 この本(ワイヤレスマイクハンドブック平成10年刊行)にもこのような、基本的な技術面を盛り込んでほしかったですね。それ以上奥へ入ってしまうと……
井野 ぼくらはそれで商売しているんで(笑い)。
金森 まあ、四季は独特のところなんで、他の人と話す機会があまりないんで、よそはどうしているか、ということを知るチャンスは少ないですね。特に放送局関係は分からないですね、今日は参考になりました。
町山 放送局はイヤモニについてどのように考えているんでしょうか。
 テレビの演出はご存じのように変化してきていますが、イヤモニもいいものが出てくればさらに変わってくるでしょうね。ぼくらの中で話しているのはイヤモニのイヤピ−スのいいのがない、ということですね。その人に合ったいいものがない。普通のイヤホ−ンだとパワ−は出ないし、かといって日常的にいろいろな番組をやっているからスペシャルオ−ダ−は出来ないし、まあそのような問題もあるんで……もうちょっと様子を見てみようかというところです。
 たしかにいいものがないですね。あまりぴったりすると、三半規管が、イヤモニを付けるということは耳をふさいでいるのと同じことなんです。バランスが崩れたときに問題が起きるのでは、と心配なんです。
 ロックなどのライブだとよほど耳にきっちりおさまったものを作らないとだめですね。イヤモニの場合はアンビエンスマイクのミックスを通しているんで。
 お客さんの反応がわからないですから。
 外タレの場合はバウンダリ−とか、客席にガンマイクを向けてそれをミックスしていますね。
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