ワイヤレスマイク(ラジオマイク)将来像を単純に「こんな風になってほしい」と考えますと…。
担当した劇場の近隣で何が行われていようと、分け隔てなく、数多くのマイクロフォンとイヤーモニターが混在出来、誰もが平和に使用できるチャンネルプランが組める帯域幅。また、アナログ・デジタルを問わない新しい無線技術の登場。さらには、それらの導入・ランニングにおいての低コスト化。送信機、受信機、マイクヘッドなどのダウンサイジング、バッテリー駆動時間の延長。そして様々なアプリケーションをこなせるシステム環境、規格…です。とワイヤレス使用する関係者にとってはお馴染みの話題ですが、私はやはり将来、「使用できる波数の増加」に期待を持っています。
私の関わっている演劇分野では、海外で制作された演劇作品がカンパニーそのまま日本に来日、またはそれの作品を日本で製作し公演する場合があります。それらの装置、照明、音響など各セクションのテクニカルな部分は、国が変わろうともオリジナル作品と同等のものが要求されます。音響については、そのプロダクションでワイヤレスマイクが使用されていた場合、その使用波数も、変更することなく受け入れることができる体制が求められます。俳優に割り当てるワイヤレスマイク数の変更は、演出プランを変更する事にも相当するので、とても重要です。
これは、演劇だけではなく、コンサート、イベントにおいても同様でしょう。
グローバルワイドに変遷してきた文化の流れは、日本でも海外のオリジナルを忠実に受け入れるやり方が今よりもっと定着しているでしょう。欧州連合加盟国の間では、すでにワイヤレスマイクのシステム自体を加盟国の中で統一する動きがあり、例えば既にロンドンウェストエンドで上演されているミュージカル公演がそのままのシステムでドイツのハンブルグで公演されているなど、加盟国内を移動できるような環境に動き出しています。具体的な数字では60〜70波弱が、将来的に欧州加盟国内でどこでも使用可能になると思われます。日本も、これに限りなく近い視野で発展する事に期待いたします。それを目指す事で隣接した場所での干渉問題を避けられることにも繋がり、ワイヤレスマイクシステム使用本数も増加し市場も活性化していくことにつながります。
技術的な面で期待が出来るのは、今一番旬なワイヤレスシステムのデジタル化です。是非、これが近い将来、定着しマルチチャンネルで稼働できるように望みます。どうしても職業柄、着目点が波数にいってしまうのですが、デジタル方式は夢があり、様々な新しい側面をワイヤレスマイクシステムでも提供して頂ける期待があります。しかしながら、当面、アナログ方式とデジタル方式の混在で発展していくことが必須です。アナログ方式を使用しつつ、デジタルのマルチチャンネルが、波数・音質・ディレイ・サイズなど様々なチェック項目を一つ一つクリアし、完全にアナログを凌駕するまで、混在できる環境を整備されていることを望みます。