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小型の業務用ラバリアマイクの外径が約6mmの当時、NHKからハイビジョンに対応の外径4mmのラバリアマイクの要請がありました。しかし振動膜面積を減らして従来の性能を維持することは物理の法則に反します。そのため採用したのが縦型振動膜ですが、円筒形の端面から音を膜面に導く構造は他に例がなく、設計上や製作上いろいろな障害に直面しました。これらを解決して製品化したのが前記のCOS-11で、開発して15年ほど経過した現在でも、最も細い業務用ラバリアマイクとしてミュージカルやテレビ番組で活躍中です。 |
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ワンポイント・ステレオマイクではステレオの広がりを大きくすると、中央の音が弱くなり、いわゆる中抜けになります、しかしユーザーの要求は「ステレオの広がりが通常の127度より広がって、しかも中央の音がピックアップできるワンポイント・ステレオマイク」でした。これは無理難題でしたが、新規に開発した5個のキャラメル型のカプセルを内蔵して、その出力を合成することで要望を実現したのがショットガン・ステレオマイクCSS-5です。 |
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音楽収音ができる100kHz対応のマイクロホンの実現は、現在の録再システムではなくてはならないマイクです。しかし帯域が広がると音響変換器の感度は極端に低下するため、ノイズの低い100kHzマイクの実現は不可能に近いと考えられていました。例えば帯域が20kHzのマイクの帯域を100kHzに広げると感度は1/25になってしまいます。またマイクの外径4mm以下にしないと、周波数特性上に約10dBの起伏が発生します。
NHK技研と当社ではこの難題を解決するため、従来と異なる新しい発想による設計と、新素材の振動膜や背電極などの新加工法の採用で、固有雑音が約20dBAという音楽収音が可能な、帯域が20Hz〜100kHzの超広帯域マイク(製品名CO-100K)の実現に成功しております。 |
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通常多用されているガンマイク(超指向性マイクの俗称)は、音響変換器の前面にスリットで開口した管を取り付け、その管での音波の干渉によって鋭い指向性を得ております。そのため超指向性になる周波数帯域は管の長さで決まり、よく使用されている30cm弱の長さのガンマイクでは、2乃至3kHz以上の周波数帯域で超指向性になりますが、それ以上の周波数では管とは関係のない音響変換器単体の指向性しか得られません。そのためユーザーから「通常のガンマイクの大きさで、低域から高域まで超指向性になるマイクを製作して欲しい」と言われた場合、マイクの設計者にとっては自然の法則に逆らった無理難題になります。音響変換器単体では中低域で超指向性にならないのは、背面方向にかなり大きな感度が生じるためです。当社ではこの背面の感度を相殺する方法を考案することで、小型にも拘らず低域から高域までの全帯域で超指向性になるマイクロホンを開発しております。 |