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前田氏の紹介:
NTTで主に無線とデータ通信関係の仕事をされたあと、日本無線、INSエンジニアリング、ジャパンシステムの各社を経て、現在は三鷹市の情報政策コーディネーターを務めている。市の「第3助役」とも言われCIO(情報戦略の責任者)として市長を補佐する立場にある。
SOHOとは:スモールオフィス・ホームオフィスの略称。独立した小規模事業者・個人事業者で業務にインターネットなどIT、デジタル情報通信を活用した「時間と場所に制限されない新しいワークスタイル」のことと言われていますが、三鷹の場合はさらに広義に考えて進められているようです。(根本)
SOHOベンチャーカレッジ第3期生
 今年の3月、ある国立大学を退官される先生が10人程いらっしゃいました。国立の教授の定年は65歳。これに対して私立は70歳のところが多いので、国立の定年後はかなりの方が私立の教授に再就職されていたのですが、近年は不景気のためか、その道もかなり狭くなっているようです。退官される先生の「お疲れ様の会」があり、私も同窓会の会長を仰せつかっているので出席、挨拶をさせられました。「先生方はそれぞれ専門分野をお持ちになっている。それを生かして社長になられ、これからも社会や大学に貢献していただきたい。そのためには、三鷹でSOHOベンチャーカレッジをやりますので、よろしかったらぜひ参加してみてください」。話は結構うけまして、カレッジ3期生募集のパンフレットを置いておきましたら、皆さんお持ち帰りになった。3期生の講義(平成16年5月18日〜9月28日)は今つづいておりますが、そのときのお一人の工学博士が「私ひっかかって来ましたよ」と受講されておられます。受講料をいただいているためかもしれませんが、無欠席で毎日楽んで受講していらっしゃるようです。

まちづくり研究所から生まれたSOHO
 三鷹市は東西に長い東京の丁度ど真ん中。東京のヘソのような所にある小さなまち(市)です。面積16.5平方キロメートル、人口17万人。ほとんどが住居地域でベッドタウン。工業地域・商業地域はそれぞれ5%。煙の出る工場はだんだん疎開して、工場の数は15年前の半分、従業員も工業出荷額も半分になってしまいました。市の税収も少なくなり、何でこれを取り返すかが大きな課題でした。
 三鷹市は市民が行政に参加する仕掛けがうまくできているところです。16年前の1988年、市の3人の職員が朝日新聞社の懸賞論文に応募して見事500万円の賞金をもらいました。これを基金に市民、学識経験者、市職員で構成する「まちづくり研究所」という勉強会のようなものを創ったんです。これが三鷹市政への市民参加の母体です。市では、10年毎に基本構想・基本計画を策定していますが、これらもこの「まちづくり研究所」が中心となって多くの市民が参画して作り上げています。「煙のでる工場の代わりにSOHOで」というのも、この研究所の第三部会からの提案でした。提案された第3部会長の清原慶子さんは当時東京工科大学の教授で現在は市長さんです。前安田市長、前内田助役から私に「SOHO CITYみたか推進協議会を設立するので会長をやって欲しい」そして「赤字にならないように」と付け加えたお話があったのが6年前です。三鷹市とは20年前にINS(高度情報通信システム)実験のころからお知り合いになっていましたし、当時、私が社長だったジャパンシステム株式会社の経営を立て直したことも聞こえていたのかもしれません。そして、三鷹市は6年前に全国の自治体に先駆けて「SOHO都市宣言」をいたしました。

SOHO CITY 三鷹
 三鷹市で初めに手がけたのが「SOHOパイロットオフィス」。駅から1分のスーパーの2階80坪を借りて40坪を9室に仕切りました。残り40坪は会議室、打ち合わせコーナー等の共用スペースにして、受付・連絡の女性を置き、これらは5年間、市の負担とした。貸室は大きさに応じて賃料32,200円〜73,500円。オープンは平成10年12月。
 9室に54件の応募があり、協議会の役員7人で面接して入居者を選定しましたが、いろいろな方がいらっしゃいました。有名商社をリストラされそうなのでネット販売会社を始めたいという方は「粗利益で年間300〜900万円は見込める」ということで、某キャピタル会社の評価は三重丸だったのですが、「ところで、何を売るのですか」と尋ねたところ、「未だ考えていません」との答えでビックリし、「お勤めを続けている間、もっと計画を煮詰めた上で、またおいでください」と、お引取り願った。ソフト会社に勤めていた女性は「直接契約してくれるところがあるので独立したい」。2人で月80万円、年間960万円入る。十分採算がとれるし、ここまで家から自転車で10分、ぜひ貸してください。この方には、最高得点で貸すことに決まりました。後でわかったことですが、一緒にやるといっていた相棒の専務は、実は彼女のご主人でした。また大手の印刷会社にいらした方が、レンズの設計がPC一台でできるのを知って、勉強して独立されました。今は年収うん千万円とか。医療機器のシステムを一人で手がけられ、年収を毎年伸ばして成功している方もいます。最初の9社のほとんどの方が工夫と努力で仕事を伸ばしていらっしゃる。
 三鷹市が「SOHO都市」を宣言するとNHKが取材に来て全国放送され、三鷹のSOHOプロジェクトは全国区となり、通産省もこれを知って助成金をくれました。これで駅前の駐輪場に7階建てのSOHOビルを建て、26社入居可能にしたのが「三鷹産業プラザ」で、平成12年4月から使っております。つぎに、徳島から出てこられて三鷹で事業をしていらした「三立電子工業」の社主の方が、10年前に工場を閉め、80歳になったので「お世話になった三鷹市に工場を寄付したい」と申し出られた。市で改修して18室。賃料も安く設定できました。一番小さな5.5uは22,550円。これには高校生、大学生からも入居希望がきました。高校三年生は書道の師範の免許をもらったので、ネットで書道塾をやりたいと言ってきましたが、残念ながら事業計画がしどろもどろだったのでお引取り願った。大学4年生のネット学習塾は事業計画がしっかりしていたので入居してもらいました。学習塾はその後、人も増え、現在は西川口へ転出して大きくなっています。
 日用品センター「名取屋」の2階を借りて8社収容しているのが「三鷹産業プラザアネックス」。「飛高堂SOHOオフィス」はマンションを借りて4社分。あるとき「2階建てのアパートをコンクリート造の3階建てのホームオフイスにしたいが、SOHOで使ってもらえないか」という話が舞い込み、これに協力して昨年5月オープンしたのが「HO三鷹」で9室。皆さんご存知の方も多いと思いますが、マイクなどにも使われる圧電素子を作っている「アツデン」という会社があります。「工場を秋田方面に疎開させたので、空いたオフィスを使いませんか」ということで今春4月からSOHO向けに2室を作りました。駅から3分のいいところにあり、さらに隣接の食堂約100坪もSOHOで使わせてもらう予定です。

「SOHO CITY 三鷹」施設一覧
一室の面積(u) 一室の賃料(円/月) 保証金 入居企業数 発足
SOHO
パイロットオフィス
5.39〜12.27 32,200〜73,500 3ヶ月 9社 H10.12.1
三鷹産業プラザ 15.3〜330.0 78,000〜1,325,400 3ヶ月 26社 H12.4.1
三立SOHOセンター 5.5〜13.23 22,550〜54,120 3ヶ月 18社 H12.4.1
三鷹産業プラザ
アネックス
7.1〜13.4 49,700〜98,500 3ヶ月 8社 H13.4.1
飛高堂
SOHOオフィス
51.28〜59.22 155,000〜160,000 3ヶ月 4社 H14.4.1
HO三鷹 27.4 93,000〜100,000 敷金/礼金
2ヶ月/2ヶ月
9社 H15.5.1
アツデン
SOHOオフィス(仮称)
57.2 121,000 敷金/礼金
なし
2社 H16.4.1
予定

サポート体制とベンチャーカレッジ卒業生

 三鷹のSOHOは家賃の補助は一切しない代わりに、経営や技術などのソフト面では徹底的に協力、支援しようというのが姿勢です。三鷹産業プラザの2階には打ち合わせ室や応接コーナーも設け、SOHO事業者は自由に使えるようになっています。また昨年からSOHO開業やベンチャー起業を目指す人を対象に「SOHOベンチャーカレッジ」を始めました。第一期は昨年4月1日から9月30日まで。そして現在は初めにお話ししましたように第3期を開講中です。週1回、夜7時〜9時の講義で20回。受講料は8万円いただいています。講師のほとんどは「SOHOH CITY 三鷹」に入居している社長で、講師をすることでまた何か新しいものを掴んでもらえるのでは、と思っております。第一期の卒業生は16人。その中で8人の方が社長になられました。いくつかご紹介します。

株式会社アファン(藤川陽一さん)
 NTTを辞めて独立を考え、他のベンチャー講座を聞いたが、講師には有名な人が来るのだが、起業にはあまり役立たなかったと、第一期を受講。動態視力トレーニングのシステムをスポーツマンに販売する事業を立ち上げました。

有限会社テック(岩永正彦さん)
 お父さんの会社の副社長になれと言われたのを蹴って、自分で機器販売会社を設立。父の会社の製品を売るほか電気や給排水の設備設計施工も手がけています。

スモールウェーブ(中川原一彦さん)
 小企業のホームページ制作を中心にIT全般のサポートを行っています。一緒にやっているのが娘さんとその婿さんで自宅で営業、典型的なHOです。

有限会社PIS企画(佐々木邁さん)
 日立電子テクノシステムの社長を定年退職。映像カメラ、インターネット、音楽をキーワードとしたビジネスを展開。とくに対象物が動いたときだけ働くPISカメラは注目製品です。娘さん2人が著名なピアニストなので音楽会の企画なども手がけています。

 2期生は12人でしたが、これも含めて、まだまだご紹介したい人、異色の方は多くいらっしゃいます。勤めていた会社に内緒で受講した不動産鑑定士の方は先日「ついに新橋で独立しました」と報告に来られましたし、障害者団体の作業所長も受講され、障害者の会社を立ち上げようと準備を進めておられます。
 社内起業・創業もSOHOの立ち上げも同じです。如何に素晴らしい事業計画を立てるかにあります。ぜひSOHOを無縁のものと思わず、これからの仕事、人生のご参考にして頂ければ幸いです。
(まとめ根本)
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