5月14日〜16日まで 東京ビッグサイトにおいて映画テレビ技術・Digital Production2003が、開催された。特ラ連は今年も情報通信月間参加行事としてブース出展した。
今年は、特ラ連の業務、違法電波防止の啓発のほかに、先にNHK青山荘で行われ好評だった『ワイヤレスマイクデジタル化の実験回路』を、松下電器産業株式会社の協力で再度公開した。前回同様、同一機種のマイクロホンを3本用意し、一本を今回のデジタル実験回路、一本を現行アナログワイヤレスマイク、一本を有線マイクとして、それぞれの音質および遅延の違いをスピーカーで確認できるようにした。今回、放送関係の方々にも体験してもらう目的で企画したが、体験した人たちからは、ディレイ感はほとんど感じないという意見が多かったものの、現行のアナログと混在使用したときに、多少、違和感を感じるという人もいた。音質については、デジタル技術によりF特を操作することで、有線と同等のクォリティが実現されるということである。体験者からは専門的な質問も多く、担当したパナソニックシステムソリューションズ社の谷口尚平氏は、対応に追われていた。
在京放送局6社は、共同主催で都市圏での本年12月から始まる地上波デジタル放送のデモが行われ、PRに力をいれていた。目前にせまってくると、デジタル化によってどういう変化がおきるだろうかと考えてしまう。まず、双方向通信が可能になると、放送が身近なものになり、今まで不特定の大衆を受け手として放送していたのが、個人を意識するようになるだろう。近い将来、テレビが、一家に一台の時代から一人に一台の時代になった時、価値観の多様化とともに、個人の要求に答えるような番組作りが求められるのだろうか。また、放送と情報どちらもメディアとして広く認知されているが、放送が、情報通信の旗頭であるコンピューターやインターネットと結びつくことで、お互いの線引きは曖昧になってくる。鮮度が命であることから、時間軸を重視する『情報』に対し、電波を介在して映像(動画)や音声に文字や絵といった情報を組み込むことができるようになった『放送』には、現在のイメージを越えた何かを求められるだろう。リニューアルされたメディアとして新しい道を歩むのかもしれない。また、『電波』vs『有線系』も過熱化してくるだろう。ケーブルテレビなど線でつながっているテレビは、現在のところ地域性があるが、光ケーブル網が密になってくると、全国ネットも可能になってくる。なんといっても送り手と受け手がつながっているので、不特定多数の人だけでなく特定の人とのやりとりが可能になるわけである。有線系の強みとして、先の東北地方を襲った強い地震では、現地との連絡手段として、インターネットを利用したIP電話や通常の電話が有効だったことがあげられる。資源として有限な電波に対して、有線には可能性が秘められているが、セキュリティの問題やウィルス、著作権など犯罪性の強い問題も山積している。これは、電波においても同様で、違法電波による障害などのほかに、最近ではコンサート中にホールの近接場所で、アーティストが使っているワイヤレスマイクの送信音をひそかに受信して楽しんでいる人がいるようだが、犯罪に結びつきやすい行為で注意が必要である。身近になればなるほど使う側のモラルが問われてくる。強い自制のもとルールを守った利用が、楽しい生活を送るための基本だということを忘れたくない。
主催者側の発表では、会期中の総入場者数は21,059人(昨年28,490人)で、PASと同時開催だった昨年より若干減少したのはやむをえまい。
|
|