周波数移行に関する情報(3)

特定ラジオマイクは、現行の周波数からホワイトスペース等の他周波数へ移行します。周波数移行に関する最新情報や用語解説、会員からの疑問などを紹介するコーナーです。

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  • 新国立劇場で「1.2GHz帯デジタル特定ラジオマイク」の実験局を検証

 平成25年1月8日、周波数移行先のひとつである“1.2GHz帯”の特定ラジオマイクを使って、実際の使用環境に即した形での検証実験が行われました。これは、同機を開発するパナソニックからの要請を受けて、新国立劇場(東京都渋谷区)のご協力により、同「中ホール」で行われたもの。使用した実験機材は開発途上のプロトタイプのもので、無線局免許も実験局となります。
●実験機器
 1.2GHz帯デジタル特定ラジオマイク(パナソニック製)
  • ・ボーカル用ハンドマイク
  • ・スピーチ用ハンドマイク、
  • ・2ピースマイク
  • ・2chポータブル受信機
 検証した主な内容は「電波の飛び」と「ディレイ(音声遅延)」について。実験の進行は当連盟理事の渡邉邦男さん(新国立劇場)が担当し、参加者は当連盟理事・役員を中心とした約60名でした。
 はじめに、舞台上や大道具など遮蔽物のある舞台周辺、ロビーや楽屋など完全に遮蔽された空間での電波伝播・音声遅延について検証。800MHz帯アナログB型ラジオマイク(806.125MHz)と1.2GHz帯デジタル特定ラジオマイク(1240.600MHz)との比較を行いました。
「電波の飛び」について、舞台上は800MHz帯と1.2GHz帯に大きな差は無く良好に受信でき、また大道具などの障害物があっても使えるという印象でした。しかし楽屋やロビーなど扉で完全に遮蔽された空間では、何とか粘った800MHz帯に対し、1.2GHz帯は急激に電界強度の低下を起こし受信不能となってしまいました。今回はポータブル受信機を使用して観客席に受信点を設けての検証実験であり、劇場などの固定設備のようにマルチアンテナシステムを組むこと(多数のアンテナを設置すること)で、その辺りのフォローは可能かと思います。
「音声遅延」については、800MHz帯アナログとの比較、さらに有線マイクとの比較を行いましたが、ヘッドホンで聞いてやっと分かる程度の遅延という感じでした。
 マイク送信機の形状については、現行の2ピースと比較して若干大きく、少々ずっしりとくる印象。送・受信機とも電池ケースは現行のものと互換性があるようです。
 今回は実用化を目指した試験機ということであり、今後の市販機に期待するところが大いにあります。

アンケート結果
特ラ連では参加された方々に、今回の実験に関するアンケート調査を行いました。25名の方から回答を頂き、ご協力を感謝しております。回答者の区分は次ページのとおりで、特ラ連会員の現業職が15名、非現業職が3名、その他が1名の計19名でした。
 全体として、この実験に対する評価は大変良く、1.2GHz帯のラジオマイクについては「遅延が気にならない」という意見が多数を占めました。ただ、電波の飛びに関しては「現行機種と比較するとやや不安が残る」という声も。とはいえ、1.2GHz帯のラジオマイクを使用できる目処がたったともいえ、市販機の発売時期が気になるところです。
 なお、アンケート結果の詳細は表を参考にして下さい。
 
回答者人数
a特ラ連  現業1560%
b特ラ連  非現業312%
c特ラ連  その他14%
d特ラ連外 現業312%
e特ラ連外 非現業00%
f特ラ連外 その他312%
 25100%
設問に対する回答
Q1:この実験の内容を理解できましたか
人数
a(よく理解できた)1768%
b(まあ理解できた)832%
c(あまり理解できなかった)00%
d(理解できなかった)00%
e(その他)00%
Q2:この実験の内容は期待通りでしたか人数
a(期待以上だった/とてもおもしろかった)728%
b(期待通りだった/おもしろかった)1040%
c(ほぼ期待通りだった/まあおもしろかった)832%
d(あまり期待通りではなかった/
 あまりおもしろくなかった)
00%
e(その他)00%
Q3:電波の飛びはどうでしたか人数
a(現行A型と同等で問題ない)416%
b(現行A型より多少劣るが支障なく使える範囲)936%
c(現行A型と比較すると不安)1248%
d(その他)14%
Q4:ディレイ(遅延、latency)は気になりましたか人数
a(気にならない)1040%
b(あまり気にならない)1248%
c(気になった)28%
d(その他)14%
Q5:「1.2GHz帯のラジオマイク」を使用することについて人数
a(大いに使いたい)624%
b(WSのCHリストによっては使わざるを得ない)1560%
c(使う気にならない)00%
d(その他)416%
・今後の検討 ・まだ判断できません ・コストにもよる
Q6:今後1.2GHz帯のラジオマイクにどんな機能を求めますか
・低価格 ・WSと同じ仕様が使い良い ・デジタルOUTは必要 ・省電力 ・高音質
・多ch対応が出来れば問題ない ・安定した電波状況 ・低レイテンシー、アイソレート
Q7:この実験で興味深かった内容および全体についての感想を書いてください
・大変参考になりました ・1.2Gデジタルが使える目途が見えてきた 
・電波の飛びの状態を知ることができた ・ディレーチェック ・レーテンシー、カバーエリア 
・バンドに関しては現行品と似た音質が望ましい
(中島)

受信機や測定器などは客席の中程に設置された。

検証実験に使用された1.2GHz帯デジタル特定ラジオマイク。すべてプロトタイプで、ハンドマイクや2ピースマイク用の送信機も用意された。

電界強度(電波の強さ)の周波数分布を見るためのディスプレイを持つスペクトラムアナライザ。その上には1.2GHz帯デジタル特定ラジオマイク用の受信機が2組設置されている。

“電波の飛び”を検証するため、舞台上の大道具の裏など、ラジオマイクをあらゆる場所に移動させて実験した。

この検証実験には特ラ連理事・役員の他、総務省やメーカー、携帯電話事業者なども参加した。

遅延について、1.2GHz帯デジタルと800MHz帯アナログなどを同時に“鳴き合わせて”比較する渡邉邦男理事。
検証実験にあたって挨拶をするパナソニックの五味貞博さん。 「待ち焦がれた新周波数帯のラジオマイク。これから育てていくのは私たちです。温かく迎えたい」と挨拶する八幡泰彦当連盟会長。

お詫びと訂正…『特ラ連レポート 130号』の本コーナーで紹介した、1.2GHz帯デジタルワイヤレスシステム(パナソニック)につきまして、使用バッテリーを「リチウムイオン」と紹介しましたが、正しくは「単3形乾電池2本」です。お詫びして訂正致します。(編集部)

  • 補償
  • まもなく周波数移行に関する大切な通知が届きます

 周波数移行に伴う補償の窓口となる「一般社団法人 700MHz利用推進協会」から各会員へ、「特定ラジオマイク(A型ワイヤレスマイク)の周波数移行に関する大切なお知らせ」が郵送(簡易書留郵便)されます(2013年3月下旬を予定)。これは周波数移行に関する実施概要や移行手順、事前調査票などが含まれており、機器の補償にも関わる重要な内容です。
 上記の通知は、無線局免許状に記載された免許人名(会社名や財団名、自治体名など)と共に「音響設備ご担当」宛てとなっており、免許人住所(本社所在地など)へ郵送されます。
確実に受け取ることができるよう、ご配慮をお願い致します。
お知らせの入った封筒のイメージ
  • 運用調整
     
  • ホワイトスペースでエリア放送他との調整を行う“連絡会”が発足

 特定ラジオマイクの周波数移行先の1つである地上デジタルテレビジョン(以下、地デジ)放送用周波数(470〜710MHz)の“ホワイトスペース”には、特定ラジオマイク以外にエリア放送など他システムが存在します。これらホワイトスペースを利用するシステム間の連絡・運用調整、障害発生時の対応を行う「TVホワイトスペース利用システム運用調整連絡会(以下、連絡会)」が発足しました(平成25年1月17日)。
 連絡会は特定ラジオマイク関連団体(特定ラジオマイク利用者連盟、社団法人 日本演劇興行協会、日本舞台音響家協会)や地デジ放送事業者、エリア放送免許人などで構成されており、事務局は「一般財団法人 電波技術協会」に置かれます。
 連絡会の主な活動内容は以下のとおりです。
  • ・地デジ放送に受信障害が発生した際、地デジ放送事業者と特定ラジオマイク免許人及びエリア放送免許人との間での連絡・調整。
  • ・特定ラジオマイクとエリア放送との間での運用調整や障害発生時の対応
 なお、この連絡会は暫定的なものであり、特定ラジオマイクのホワイトスペースでの運用が本格化した際には「協議会」に移行する予定となっています。
 周波数移行後においても、特定ラジオマイク間の運用調整は当連盟が引き続き行いますが、地デジ放送やエリア放送との障害が発生するなど緊急の場合には、この連絡会から直接、会員の皆様に連絡が入ることも想定されています。

※詳細は「理事会報告」をご覧下さい。
  • 運用調整
  • ホワイトスペース“チャンネルリスト”がまもなく公開

 特定ラジオマイクの周波数移行先の1つでホワイトスペースにおいて特定ラジオマイクを運用するには、一次業務である地デジ放送に障害を与えないということが前提となっています。そのため、ホワイトスペースの利用が想定される場所(およそ1,000か所以上)を対象に、地デジ放送に影響を与えず利用できる周波数を測定・シミュレーションし、その結果を明示したリスト“チャンネルリスト”が作成されることになりました。  チャンネルリストの作成は総務省が主体となっており(次年度以降は未定)、その委託を受けた「一般財団法人 電波技術協会」が実際の測定作業等を実施。既に対象となる劇場やコンサートホールなどには関連の通知がなされており、スケジュールなどの調整の上、測定作業が急ピッチで進んでいます。
 チャンネルリストの公開は、総務省のWebサイト上にて平成25年3月末を予定。周波数移行先のホワイトスペースにおいて「どの場所でどのくらいのチャンネル数が使えるのか」ということが具体的に判明するだけに、その内容が注目されます。

※上記の測定作業は、特定ラジオマイクがホワイトスペースにて使用できる周波数を決める重要な作業です。通知のあった固定会員を中心とした皆様には、作業へのご理解・ご協力をよろしくお願い致します。
総務省Webサイト http://www.soumu.go.jp/
  • 書籍紹介
  • 周波数再編と終了促進措置に関する法令の解説書が登場

  特定ラジオマイクの周波数移行や補償に関する終了促進措置などは、すべて法令で定められ制度化されたもの。しかし、これらを知ろうとすると、関連の法令を探し出したり、小難しい法令を読み解かなければならず、面倒に感じることもあるでしょう。
『詳解 改正電波法の実務』(第一法規)は700MHz/900MHz帯の周波数再編と終了促進措置について、法令から実務上の留意点まで紹介した解説書です。著者は、総務省で制度整備に直接関わった永井徳人氏。関連する法令の条文やその解説はもちろん、「既存システムの利用者は、周波数を移行する義務がありますか?」や「携帯電話事業者が負担する費用の範囲はどこまでですか?」といった素朴な疑問がQ&A形式で分かりやすく解説されています。周波数による電波の特性や無線局の免許制度など基礎的な部分も網羅されているので、特定ラジオマイクを扱う初心者にも便利な内容です。
(石川)
運用担当者ご変更の際は「周波数移行について」
必ず後任にお引き継ぎ下さい!

特定ラジオマイクの周波数移行は、新周波数に対応した機器へ交換するための補償交渉など、まもなく重要な局面を迎えます。運用担当者を変更される場合は、周波数の移行がある旨や補償の関係など、必ず後任の方への引継ぎをよろしくお願い致します。(特ラ連事務局)