〜これまでの経緯〜

これまでの『特ラ連レポート』でもお伝えしている、特定ラジオマイクの周波数帯移行問題。「移行の具体的なスケジュールは?」「補償はどうなる?」といった疑問も多くあると思います。そこで、以下の項目について総務省移動通信課にお聞きしました。

※ここに掲載する情報は、2012年6月上旬現在のものです。

 現行の特定ラジオマイクは、770〜806MHz(デジタル含む)という周波数を使用しています。これらを含む周波数帯は、多くの情報量を伝送でき、障害物があっても迂回して伝わりやすいという良質な電波特性を持っていることから、“プラチナバンド”とも呼ばれています。
 携帯電話など近年の増大する通信需要に対応するため、特定ラジオマイクの使用している周波数帯を認定開設者(=携帯電話事業者)が引き継いで使用することが、電波法の改定によって決まりました。これにより、近い将来、現行の特定ラジオマイクは使用できなくなります。そして、特定ラジオマイクの周波数帯は、ホワイトスペース(地デジ470〜710MHzのうちの空き周波数)や710〜714MHz、1.2GHz帯へ移行しなければなりません。
 現在、新しい周波数帯に対応するマイク機器の技術的条件が決まり、ホワイトスペースでの運用調整方法など具体的な検討がなされています。

●今後の動きはどうなる?

Q 特定ラジオマイクの周波数を引き継ぐ「認定開設者」はいつ決まりますか?
A 700MHz帯(特定ラジオマイクの周波数帯)の周波数再編については、2012年4月11日、電波監理審議会に「開設指針案」「周波数割当計画の変更」「無線設備規則の改正案」を諮問し、原案を適当とする旨の答申を受けました。今後、速やかに開設計画を募集し、審査を経た上で、2012年6月中を目途に認定開設者を決定する予定です。
Q 周波数帯移行に関する情報は、早め早めにユーザーへ伝えてほしい
A 700MHz帯においては、認定開設者が複数となることも考えられるので、すべての認定開設者が共同して終了促進措置(=移行に関する補償)を進めることになります。認定開設者は、認定後3か月以内に認定開設者間の協議を行って合意をし、当該の合意内容を公表しなければなりません。また、認定開設者は免許人(=特定ラジオマイクのユーザー)に対し、当該合意から6か月以内に終了促進措置の実施に関する概要を周知し、その実施手順を通知しなければなりません。
※ 特ラ連では、周波数帯移行関連の新しい情報が入り次第、『特ラ連レポート』やWebサイト(http://www.tokuraren.org/)を通して、会員の皆様にお知らせ致します。(特ラ連)
Q いつから新しい周波数帯を使えるようになるのですか?
A 制度上は「周波数割当計画」を変更した後に、移行先の周波数を使用できるようになります。具体的には、2012年7月25日からです。実際には、ホワイトスペースとして利用できる周波数を地域ごとに確定して、技術基準が制定され、移行先周波数に対応した機器が発売されてから移行が開始となります。なお、各免許人に対する個別の周波数移行時期については、認定開設者と免許人との協議によって決定されます。
Q 現行周波数帯と新周波数帯のマイクの併存期間を必ず設けてほしい。具体的に並存期間は、何年と考えていますか? 
A 既存の無線局(現行の特定ラジオマイク)については、制度上、2019年3月末の使用期限まで使用可能です。しかし、免許人と認定開設者との協議によって、旧周波数の使用を終了する時期を合意した場合には、当該合意に従って旧周波数の無線局の使用を停止することもあります。
※ 2012年7月25日からホワイトスペースは使用可能です。新周波数に対応した試作機が完成次第、検証することになります。その際、現行機と比較するなどの実用試験を行うことから、新周波数と現行周波数の相当の併存期間が必要です。併存期間中、現行周波数帯で携帯電話の電波が出る場合は、認定開設者との協議を行うことになると思われます。(特ラ連)
Q 新周波数に対応したマイクの生産量にも限界があると思われます。会員の手元に届く納期を考慮して移行期間を考えてほしい
A 個別の免許人の周波数移行に関する時期は、認定開設者と免許人との協議により決定されます。
Q 携帯電話事業者に迷惑をかけない屋内であれば、現行の特定ラジオマイクを引き続き使用できますか?
A 仮に、携帯電話基地局との混信を生じないとしても、制度上、特定ラジオマイクが現行の周波数を使用できるのは2019年3月末までです。

〜 今後の動きに関するまとめ 〜

  • 特定ラジオマイクの周波数を引き継ぐ認定開設者(=携帯電話事業者)は、2012年6月中旬に決定する。
  • 現行の特定ラジオマイクは、2019年3月末まで使用できる(認定開設者との合意によっては、時期が早まる可能性あり)。それ以降は、一切使用できない。
  • 移行先の新しい周波数帯は、2012年7月25日から使用できる。しかし、地域ごとに使用可能な周波数を決めたり、それに対応するマイク機器の開発などに時間がかかる見込み。

●移行にあたって補償はどうなる?

Q 補償交渉の相手は誰になりますか?
A 特定ラジオマイクの周波数帯移行に関する補償は、700MHz帯の認定開設者が行うことになります。従って補償交渉は、認定開設者と個々の免許人との間で“民々”による交渉となるわけです。認定開設者は2012年6月中を目途に決定する予定となっており、最大3者となることが想定されています。その場合、免許人との合意・費用負担は共同で行うことになります。
Q 完全に民々による交渉? 三菱総研(移行に係る機材などを調査)といった第三者機関は入りますか?
A 認定開設者は、免許人への終了促進措置に関する実施概要の周知や実施手順に関する通知に先立ち、免許人団体(=特ラ連を含む4団体)との間で当該周知・通知方法等について協議を行います。その上で、個別の免許人に対する負担の内容及び方法等については、認定開設者と免許人との間の個別協議において決定されることになっています。なお、三菱総研は一切関与しません。
Q 補償は金銭によるものですか? 機器・設備の交換になりますか?
A 無線設備等の現物による交付か金銭による交付かなど、具体的な費用負担の方法については、認定開設者と免許人との間の個別の協議において決定されることになります。
Q 補償対象となる機器・設備の補償額はどのような基準で決めますか? 機種・性能の異なる機器でも補償額は統一されるのでしょうか?
A 周波数移行後の無線局(=特定ラジオマイク)については、既存の無線局と同等の運用が想定されます。無線設備の機種や性能等は個々の免許人によって異なるので、価格や性能について、全免許人一律に定めることは想定されていません。
Q 機器・設備に対する補償額の評価は帳簿上の残存価格ですか?
A 認定開設者が負担する費用は、既存の無線設備等の残存価額ではありません。移行後の周波数において、無線局の運用を開始するための無線設備・附属設備の取得費用及び工事費用となっています。
Q 交換の対象となる新周波数対応の機器は、具体的にどのような基準で選定されるのですか?
A 周波数帯移行の時点で、免許人が希望し認定開設者が承認する機種があれば、当該機種が交換対象です。周波数帯移行は、新周波数に対応した機器の販売が開始された後、順次開始されます。
Q 交換の場合、免許人側が機器・設備のメーカーなどを選びたい
A 原則として、メーカーの選定等は免許人が行うことになると思われますが、最終的には移行費用の負担対象品として、免許人と認定開設者との間で合意することが必要です。
Q 同じ性能を持つ機器でも、価格が違う場合はどのような査定になるのですか? 免許人の希望に合わせてほしい
A 最終的には認定開設者と免許人との協議により決定されますが、市場価格等を鑑みて、認定開設者が機器取得に必要な実費を負担することが想定されます。
Q> 2/4帯切り換え型の特定ラジオマイクは2本分の補償になりますか?
A 電波を出しているのは1波なので、1本として扱うことになります。
Q 劇場など固定施設の場合、アンテナといった設備工事の補償や工事期間中の休業補償なども受けられますか?
A 無線設備に附属した設備の取得、工事に要する費用についても、認定開設者による負担の対象となります。ただし休業補償については、負担の対象として規定はされていません。実際には、認定開設者と免許人との間の個別協議において、無線設備を使用していない時間帯に工事を行うなど、今後、具体的な方法を検討して頂くこととなります。
Q イヤーモニターなど、1つの送信機に対して複数の受信機を使用している場合がありますが、受信機についても台数分の補償を受けられますか?
A 周波数帯移行後、無線局の運用に必要な範囲であれば、附属設備も費用負担の対象となります。
Q 全国各地を移動して運用する場合、現在は1本のマイクですべての地域をカバーできます。しかし、ホワイトスペースへ移行すると、統一的な周波数帯で運用できないことも考えられます。その場合、現行のマイク1本に対して、複数地域をカバーした複数本のマイクと交換してもらえますか?
A 従来と同等の運用を確保するために必要な範囲で、費用負担の対象となります。なお、個々の免許人についての具体的な負担内容は、認定開設者と免許人との協議によって決定されます。
Q ホワイトスペースへ移行し、地デジの放送波を避けて運用するための測定器など新しい機材が必要になった場合、それらの購入経費は補償の対象になりますか?
A 測定器の購入費用は、認定開設者による負担対象としては規定されていません。
Q 新周波数帯に対応した機器へ交換した場合、その無線局の免許に関する変更申請経費なども補償の対象になりますか?
A 周波数帯移行に伴い、既存の無線局から周波数を変更する場合の手続については、今後、検討していくことになっています。なお、新規に無線局を開設する場合の費用は免許人の負担となります。
Q 現行・新周波数の併存期に使用感などの検証のため、両周波数の送信機をそれぞれ所有したとします。その場合、電波利用料は双方の局数分、支払わなければなりませんか?
A 一義的には、局数分の電波利用料を支払う必要があります。
Q 現行・新周波数の併存期に、現行周波数の特定ラジオマイクを新たに開局することは可能ですか? また、その機器は補償を受けることができますか?
A 一定の時期以降、現行の周波数を使用する特定ラジオマイクの新規免許は停止する予定です。それまでに開設された無線局については、費用負担の対象となります。なお「一定の時期」については、2013年度末を予定していますが、今後、省令等規定の中で確定させることになっています。
Q A型とB型の両周波数帯を送信できるラジオマイクは、移行後はどのようにすればよいでしょうか? A型を送信不能にした上で、B型の周波数で引き続き使用したいです
A その方法については個別に各メーカーに確認することが必要です。
※ まずは、新しい周波数帯の機器の補償を受けましょう。その上で、現行周波数帯のマイクについては、A帯の送信不能処理をメーカーに依頼し、B帯のみ引き続き使用するのがよいと思われます。(特ラ連)
Q A型のチャンネル不足をB型で代替していたのですが、そのB型ラジオマイクについても新周波数帯の機器に交換するなどの補償をしてほしい
A B型のラジオマイクは周波数帯を移行しないため、認定開設者による費用負担の対象とはなりません。

〜 補償に関するまとめ 〜

  • 新しい周波数帯への移行費用は、認定開設者が補償してくれる。
  • 補償の範囲は、各免許人(=特定ラジオマイクのユーザー)が新しい周波数帯において、現在の運用規模(マイクの本数、受信機の数やアンテナ設備など)と同じ状態で運用できる範囲となる。
  • 補償の具体的な内容については、認定開設者と免許人が個々に話し合って決める。
  • つまり、補償の仕方(金銭による補償or機器の現物交換など)や、メーカー・機種の選定(現物交換の場合)などについても、認定開設者との話し合いによるものとなる。
  • 特に劇場など固定施設の場合、特定ラジオマイク関連設備の工事費用も補償してくれるが、工事に伴う劇場の休業補償などは受けられない。
  • 現行の特定ラジオマイク機器であっても、2013年度末(予定)までに免許を取得すれば、移行に必要な費用を補償してもらえる。

※特ラ連=特定ラジオマイク利用者連盟
※地デジ=地上デジタルテレビ放送
(石川)