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Inter BEE 2011 チュートリアル・セッション 音響セクション

タイトルデジタルワイヤレスマイクの原理と応用
11月17日(木)15:00〜16:30  出席者:63名
講 師宮前 真二氏 タムラ製作所 ブロードコム事業部 技術統括部

幕張メッセ、国際会議場101会議室において、上記のタイトルで行われたセッションの概要をお伝えします。宮前氏には当連盟の技術委員長をお願いしております。
初心者向けに分かりやすくワイヤレスマイクの概要を説明し、アナログとデジタルの比較により、それぞれのメリット、デメリットを解説していただきました。
現状におけるワイヤレスマイクの使用状況から鑑み、デジタルの必要性を知ることが出来ました。以下、紙面の都合により主だった項目を選択しました。

1. ワイヤレスマイクの種類 A型〜C型
前回のレポートと同時にお送りした、Q&Aをご覧下さい。

2. 使用本数を増加するには
 特ラ連の会員が所有する免許制のワイヤレスマイクは年々増加する傾向にあり、放送局の所有を加えると2万本を超えております。そのような状況の中で、いかに周波数を有効利用していくか、ということが主たる目的になります。
限られた周波数の中で本数を増やす、ということはデジタルの場合、3次相互変調で使用できない波が再利用できます。これにより新たなサービスが可能になりましょう。

3.使用本数を増やすコンパンダ方式(コンプレッサーとエキパンダーの造語)
 アナログのスリム化は研究が進み、コンパンダ方式はその最たるものと言えましょう。会員の皆さんはご存知のように、マイクアンプの段階では、リニア(330KHzの帯域)と同じですが、送信機から電波で送り出される時、コンプレッサーにより圧縮され、帯域を狭くして送信本数を稼いでいます。その電波を受けた受信機側でエキスパンド(伸張)します。これがコンパンダ方式です。

4. デジタルにおける周波数の有効利用
 2.でも触れましたが、電波干渉等によってアナログでは使えなかった周波数を再利用します。3次相互変調歪の出ているチャンネルに重ねて使用するわけです。これは次のD/U比と関係あります。
 このような方法をとらないと、新たなサービスが難しくなります。そのためにデジタル化が必要になります。
 
5. D/U比
この言葉は、D:デザイヤー:希望波 と、U:アンデザイヤー:必要ない波 の比率のことです。つまり必要としない雑音や歪などをいかに抑え少なくするか、この問題ではアナログに比べてデジタルは可能性が高い。次の図をご覧ください。

DU比

アナログでは、妨害波は相当低く抑える必要があります D/U比 40dB以上。
デジタルは、アナログほどではありません D/U比 20dB以上。

6.干渉による影響、データ訂正
 デジタルのD/U比20dBというのは、アナログの40dBに比べて、マイクどうしの近距離での使用が可能である、ということです。つまりある一定のエリア内では、デジタルの方が使用可能本数が多い、ということになります。

同一周波数による電波干渉距離例

 また、デジタルは、アナログ信号を符号化して伝送します。そのため、ノイズがあった場合、データを訂正することにより修正できます。

7. S/N比、リニアリティの改善
 デジタルは受信感度点までS/N比に変化がありません。アナログのように感度が下がるとだんだんノイズが増える、ということはないわけです。またリニアリティの良さは立ち上がりの鋭さにつながり楽音が改善される、というメリットがあります。

8. FPU全帯域使用可能(デジタル)
2009年5月の電波法改正にともない、今まで使用出来なかった、FPU1ch、3chも使用可能になりました。

9. デメリット
 補正回路やA/D、D/A変換等による遅延があり、消費電力が大きい、というような問題がありますが、これらはもっと改善されていくと思います。遅延は3〜4ミリ程度ですが、これは音源から1〜1.3メートルほど離れた音の到達時間です。

10. 事務局より
 会員の皆さんはレポートでご存知と思いますが、特定ラジオマイクの周波数移行の件についてはレポートで逐次報告しておりますので、引き続きをお読みいただければ幸いです。

以上当日の概略です。

取材  編集 大野