サウンドフェスタ2011
会期平成23年6月15〜16日
会場グランキューブ大阪(大阪府大阪市)10階
運営サウンドフェスタ運営事務局
協賛日本橋オーディオ店会(NASA)、出展関係各社
入場者数2、655人
出展者数68社
『サウンドフェスタ2011』の会場となったグランキューブ大阪(大阪国際会議場)。
有名アーティストのコンサートなども開かれる大型展示場だ。
梅田から電車を乗り継げば、約15分程度でアクセス可能

 関西地区における文化・経済の中心地である大阪で、音響・映像機器のイベント『サウンドフェスタ2011』が開催されました。このイベントは年に1度行われるもので、今年で17回目の開催です。
 一番の目玉は、国内外のメーカー総勢64社が集う展示会。ラジオマイクはもちろん、スピーカーやミキシングコンソールなど、最新の機器を直接触れることも可能です。また、知識豊富な各ブースのスタッフから、製品に関して詳しい説明を受けることもできます。
 この他には、各種試聴コーナーが充実しているのも特徴です。ラジオマイクやワイヤレスインカム、小型スピーカーやヘッドフォンなど、各メーカーの製品をそれぞれ比較して聞き比べることができるのは、貴重な機会といえるでしょう。
 各セミナーでは、デジタルオーディオから照明関係まで幅広い講座を展開。基礎的な内容の講座も多く、初心者でも安心して楽しめる構成となっていました。ちなみに、特ラ連では「ワイヤレスマイクロフォンシステムの動向」と題してセミナーを実施。立ち見の参加者も出るなど、熱気あふれるセミナーとなりました。
 2日目の16日は生憎の雨模様となりましたが、それでも多くの来場者がつめかけた本イベント。当日の様子のうち、ラジオマイク関係を中心に一部を紹介しましょう。

展示機器に触れ、音や操作性などを直接確かめることができる。来場者は業界関係者が中心だが、学生やオーディオ愛好家といった一般来場者の姿も多く見られた
ステージ様のセットを組み、実際に演奏などを行って製品のアピールをしているブースもあった(エイ・ティー・エル)。フルートの音が会場内に響き渡ると、多くの来場者が集まった

周波数移行の話題も? 特ラ連セミナーは満員御礼にて大盛況!

特ラ連事務局では、今回のイベントにセミナー講師として参加しました。当日、約60席が用意されたセミナー会場は立ち見が出るほどの満席状態。15日と16日の2日間で、延べ約160人のご参加を頂きました。
「ワイヤレスマイクロフォンシステムの動向」と題したセミナーの内容は以下の通りです。

  • 特ラ連の設立された理由や特定ラジオマイクと周波数を共用する放送局との関係
  • 特ラ連の業務内容や運用連絡と調整の仕組み
  • 特定ラジオマイク周波数帯の移行について
  • 電波利用料の改定について
 特に周波数帯の移行に関しては、受講者から活発な質問が出るなど関心の高さが伺えました。これに関して、セミナーでは主な問題点を整理して解説。今後の対応方針や総務省・関連団体と意見交換を行っている旨を報告しました。
 電波利用料の改定については、従来の特定ラジオマイクは料額が微増してしまうものの、送信出力50mWのデジタル特定ラジオマイクに関しては料額が大幅に下がる点を報告。50mWタイプ普及の足がかりとなるであろう今回の改正は、ユーザーやメーカーにとって朗報となったようです。

受講者で満席となった特ラ連セミナー会場。15日については、冒頭で八幡会長の挨拶があった
今回のセミナー講師を務めた青木事務局員

展示会では最新の特定ラジオマイク関連機器も披露された

本イベントのメインともいえる展示会では、特定ラジオマイク関連機器を製造するメーカーやディーラーも多く出展。海外製品を扱うブースでは、定番のアナログタイプを前面に展示する一方で、国内メーカーの中には最新のデジタルタイプに力を入れて展示するブースもありました。
 来場者たちは、実際に製品を手に取って試用したり、スタッフの製品説明に耳を傾けていたりしました。最新機器をチェックできるのもこの展示会の魅力といえるでしょう。

会場には幾つかのデジタル特定ラジオマイクが出展されていた。TRANTECブランドの「S-D7000」シリーズ(ティーオーエー)は、音声信号をデジタル処理することによって、ノイズの少ない高音質な音声を実現。最大で48波の多チャンネル同時運用が可能となっている ステージ上でも目立つ、デコレーションの施されたラジオマイクが登場(ゼンハイザージャパン)。ユーザーの好みのデザインをデコレーションすることが可能だ。ちなみに、光り輝くパーツは耐水性の接着剤で貼り付けられており、アーティストが手に汗をかいてもはがれ難いとのこと ラジオマイク本体ばかりではなく、周辺機器も多く展示されていた。写真は耳かけタイプのマイクロフォン「BP892cW-TH」(オーディオテクニカ)。目立たない肌色タイプなので、スマートにラジオマイクを運用することができそうだ

アナログとの違いは? メリットは?
デジタルワイヤレスマイクロフォンセミナー

時代の趨勢はアナログからデジタルへ向かっていますが、ラジオマイクも例外ではありません。これから主流となるデジタルラジオマイクについて、同製品をリリースしているメーカー3社によるセミナーが行われました。

●ティーオーエー
 デジタル化によって、同一チャンネルを再利用しやすくなった点を実演も交えて解説。
 同一のチャンネルを隣接場所で同時に使おうとした場合、従来のアナログタイプでは双方を100m以上離さないと干渉が発生してしまいます。一方、デジタルタイプは「アナログに比べて妨害波が大きくても明瞭に再生できる」という特徴があるので、双方を数十m程度離せば同一チャンネルでも同時使用が可能ということです。
 実験として、セミナー会場の隅と隅(25m程度離れている)に同一チャンネルを設定したラジオマイクのセット(送信機と受信機)をそれぞれ設置。両方を同時に使用した場合、アナログタイプでは双方ともノイズが入ってしまいましたが、デジタルタイプではキレイに再生されていました。
会場内にラジオマイクを2セット持ち込み、同一チャンネル同時使用時のデジタルとアナログの違いを実験した(ティーオーエー)
●タムラ製作所
 NHKラジオ放送開始の1年前である大正13年が創業の同社(当時の社名は「田村ラヂオ商会」)。デジタルの電波には相互変調による妨害がないことから、等間隔にチャンネルプランを設定できるというメリットや、アナ→デジ移行期に起こるであろう「アナログデジタル混在使用時の注意点」が紹介されました。
 また、同社製品の特徴として、モードを切り替えることによって最大で30本(B型)を同時使用できる点や、他社製品に比べて低遅延であることがアピールされていました。
デジタルラジオマイクが実験段階だった頃に撮られた、各社実験局の写真。インカムなどのきょう体を流用しており、マイクとは程遠い形状に驚きだ(タムラ製作所)
●Line 6 japan
 ラジオマイクの使用する周波数は、800MHz帯が主流となっています。一方、同社のデジタルラジオマイクは、2.4GHz帯という高い周波数を使っているのが特徴です。
 セミナーでは、デジタル化のメリットなどが解説された他、12本を同時使用できる点などがアピールされていました。
 ちなみに、同社製品の使用可能範囲は、90mタイプ(XD-V70)と30mタイプ(XD-V30)の2タイプを用意しているとのことです。
デジタル化のメリットを解説する。なお、同社の製品は「ティアック」ブースにも展示されていた(Line 6 japan)

試聴コーナーや展示即売会も充実していた

 試聴コーナーでは、ラジオマイクやヘッドフォン、小型スピーカーなどを、来場者自身が実際に試聴することが可能。
 例えばヘッドフォンの試聴コーナーでは、来場者が持参したCDなどの音源を使って試聴することもできました。展示品はさまざまなメーカーに渡っており、40種類以上のヘッドフォンの中から自分好みの一品を見つけることができるのです。
 音響関連アイテムが一同に揃う「展示即売会」では、新品からジャンク品までを特価で販売。オープンリールのデッキなど、懐かしい機器も売られていました。常に来場者であふれており、人気の高さが伺えました。

ヘッドフォンの試聴コーナー。これだけ数が揃うと、ひと通り試聴するだけでも大変!?
ラジオマイクの試聴コーナーでは、各社の送信機と受信機がラックに並んでいた。展示メーカーは9社に及んだ
展示即売会場。掘り出し物を求めて、数多くの来場者が詰めかけた

※次回の『サウンドフェスタ2012』は、平成24年6月13〜14日の2日間、場所はグランキューブ大阪(大阪国際会議場)の5階メインホールを予定しています。
(石川)