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特ラ連 設立20周年記念セミナー「A型ラジオマイクの賢い運用方法」

 平成22年6月11日、東京北区北とぴあ・カナリアホールにおいて開催されました。
参加人数は115名で、立錐の余地もないほどでした。
A型ワイヤレスマイクは、さまざまな分野で使われていますが、今回は、与えられた共通のパフォーマンスについて、舞台、テレビ、映画それぞれの分野について収録方法の違いを体感してもらおうという企画です。パフォーマンスは宮沢賢治〔銀河鉄道の夜〕の一部について、ステージを組み、照明など実際の舞台に近い設定を行い、役者に演じてもらうというものです。今回、それぞれについて、おもにパネラーの方が話されたことを中心にまとめてみました。  冒頭、当連盟 八幡泰彦会長の挨拶があり、当連盟理事である 新国立劇場 渡邉邦男氏の進行ではじまりました。
本年度功績賞授賞作品「ヘンリー六世」の音響プランナーである、上田好生氏が、ワイヤレスマイク38chマルチチャンネルプランについての苦労話に触れられた後、本題に入りました。

【舞台】 パネラー 新国立劇場 上田 好生氏
 一般的に演劇、ミュージカルという同時進行型のパフォーマンスはせりふ中心。嵐や戦闘シーンなどでは音楽、効果に負けないせりふの拡声が必要。レベルのバランスが難しい。また、劇場という空間では、ワイヤレスマイクの装着などについて重要であり、ワイヤレスケアーという電池の管理、装着等に関するプロがかかわることが多い。マイクの装着では、髪が短い人には耳かけ式、逆に多い人、ウィッグを使う場合はピンで髪に止めるなど、目立たないようにする。
トランスミッターの装着については、背中やお尻あたりに隠すことが多いが、女性に多くみられる薄い衣装の場合は、足の内腿に、また、殺陣のような動きが激しいときには、わきの下に装着したりする。また、からだを動かすため、汗対策にも気を使う。ストッキングを巻いたり、防水スプレーを使うなどしてマイクおよび送信機トラブルを防ぐ。これらについては、役者さんを使い仕込み方の実際が披露された。

【テレビ】 パネラー 日本放送協会 山中 義弘氏
 放送では、有線マイクが近づけない分、ワイヤレスマイクでカバーする必要があり、なくてはならないものである。ただし存在を知られてはならず、衣装の中に隠すのがほとんど。高い明瞭度を求められるため衣擦れの音に対して気を使う。マイクを仕込む際にゲルを使って、振動を吸収、ノイズを軽減するよう工夫している。
 テレビで重要なのは、カメラが引いているカットでも、大事なせりふの場合は音量には気を使う。大切な音やせりふが良い音で聞こえないと、感動させることができない。収録方法については、劇場中継のような場合は臨機応変な判断が必要でブーム等を活用することもありえる。また、劇場中継のような場合は、アンビエンス効果(実際に劇場空間に居るという雰囲気)が必要にもなる。今回このテレビについては、舞台を生中継しているという設定で、事前に収録した内容を会場で再生した。

【映画】 パネラー フリー 橋本 泰夫氏
 ワイヤレスマイクを隠さなければいけないのは、テレビと似ている。
 収録についていえば、ロケなどでの雑音が敵。クリアーな音をいかに録るか。また舞台は基本的に時系列的に進んでいくのに対して、カットにより撮る順番が違うので収録環境の変化による音の違いについて気をつける必要がある。またアフレコでは、臨場感が薄れやすいので、同時録音をしっかり録らないといけない。
 ロケでは、ワイヤレスマイクをブームに取付け録音する場合もあり、ブームの影が入らないよう注意が必要である。
 今回、3カットに分けて順番を変えてワイヤレスブーム、ガンマイクを使用しての録音。録音された音をその場で編集、再生したが、映画館で体験するのと同様な音を体感できた。

 

 パネラーの皆さんが共通しておっしゃっていたのは、音でいかに感動させるかということ。そのためにはあらゆる工夫を惜しまない。ワイヤレスマイク運用が活発化することで、作業が煩雑になることもあるようですが、人に喜んでもらうためにマイクロホンの仕込み方法その他、スタッフたちと知恵を出し合っていく姿勢に感銘しました。
 なお、この企画に関わられたスタッフおよびキャストの労力はそうとうなもので、打ち合わせや、リハーサルを行い当日を迎えた。仕込にも相当な時間を費やし、ひとつのことをなしえるための一体感や情熱が強く感じられました。会場でご覧になられた方々にもそれが伝わったのではないでしょうか。
 最後に、アンケートをお願いしたところ28名から回答いただきました。集計結果をお知らせします。

  1. 内容について
    参考になった26名 無記入2名
  2. 今後セミナーを開催する場合、どういうテーマが良いですか
    • 混信に対する対処法
    • 電波を逃がさない方法をそれぞれのジャンルで意見交換する場を持ちたい
    • デジタルワイヤレスマイクの性能比較
    • マイクのケアーについてもっと知りたい
    • いろいろな使用例とトラブル、楽器への応用、移動の大きいときの対応など
    • 色々な角度から多数のセミナーを開催してほしい
    • 周波数プランについて
    • 演劇だけでなく音楽ものでお願いしたい
    • 多チャンネルの運用事例紹介など
  3. どういう仕事をされていますか
    舞台音響 11名  テレビ局音声・技術8名  ホテル等施設管理3名
    20代 4 30代10  40代8 50代3 60代2 未記入1
  4. セミナーについてお気づきの点があればお聞かせください。 という質問にはTVや映画の音声収録についてよくわかったという意見が複数ありました。そのほかもう少し大きな会場でやってほしい、見づらかったので高い壇上でやってほしい、名札があれば交流の助けになるなどのご意見がありました。
     今後の参考にさせていただきます。ありがとうございました。

青木
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