私はこのところTDをしてますがスキルは音声で公開音楽番組を担当してました。同じ会場は十年に一回、毎回違った環境でワイヤレスマイクを使っていました。近い将来のデザインは現場での不満の解消と思うのでざっと問題点を連ねてみました。
- マイクが数本ならまだしも20本に近づくと受信機の山とアンテナの林が出来る。アンテナは二本、受信機はワンラックに収めたい。
- 乾電池は接点不良が付きまとう。身の回りで目覚まし時計と家電リモコンが単三乾電池でモバイル機器は皆充電池です。内蔵充電池と誘導型充電器付きのクレイドルが今日的と思う。単三乾電池に拘るなら固定は電池の側面を傷が付くほどガッチリ金属片で押さえる。その傷は使用済みの判断材料にもなる。
- 周波数特性は20kHzまで延び、トークから歌唱までリニアリティ保ち充分なS/Nがあり、マイクロホンユニット部の性能を恰もワイヤードのように伝えられたら……。
- 色々なノウハウを排斥したい。
- 内蔵アンテナのハンドヘルド送信機は両手で持つと輻射が下がる。
- 携帯電話対策で受信アンテナを人の溜る場所や腰から頭の高さにセットしない。
- 送信機への過渡的なアクションで電池が動かぬよう粘着テープで押さえてる。
- 受信アンテナ直近に送信機を溜めない。
- 3次歪波発生周波数を考慮したチャンネルプランをする。
いくつかの問題はデジタルにする事で解決できそうです。私は「将来のワイヤレスマイクはデジタルだ」と信じています。しかし、無線機の基本的特性に関わる事や、電波銀座のUHF帯では難しい課題も多いと思います。
期待のデジタルワイヤレスマイクを何社から御借りして使いました。送信機のゲイントリムを受信機からリモート出来る製品もありました。音はワイヤードに近づいた感じがしてとても新鮮でした。現在のデジタルワイヤレスマイクは符号化方式は未発表ですが圧縮率は 1/6が多いようです。サンプリングレート、ビットデプス、変調方式も各社まちまちでした。出来たばかりの物に何ですが、要望を並べてみました。
- 素材音を扱うのでパッケージ制作者はそれ以上のレートとデプスが必要でしょう。
デジタル放送ではサンプリングレートが48kHz以上でビットデプスも素材を扱うので24bitは欲しいです。 - 伝送レートはクウォリティーを上げるかチャンネル数を増やすかでユーザーが切り替えられると良いと思う。
- ワイヤレスマイクの伝送部とマイクロフォン部を分けて繋ぎ部分を規格化し色々なメーカーに参入してもらうのは可能だろうか。多くの場合ワイヤレスマイクはマイクロホンメーカーが扱っている。開発の主軸のマイクロホン部分を他社に渡すのはあり得ないとも思うが。伝送部分の音作りはコンソールやヘッドアンプに近いと思う。コンソールメーカーが関わればコンソールからワイヤレスマイクをコントロールする開発が出来るだろう。マイクの音作りもフラットを追求するが、時に歌手との相性が出るほど人格に近い個性を求める事もある。ボーカルマイクはWEBでしか見た事の無いものまで多様で、それぞれにユーザーがいてその個性を生かしてます。開発者のこだわりを違う土俵ですることでシーンに広がりがでると思う。
現状のデジタルワイヤレスマイクは従来のワイヤレスマイクの機能を置換えた感が強い。ステージワークは、ハンド、ヘッドセット、イヤモニターのワイヤレス化で広がった。たとえば複合化すると、ヘッドセットの送信機とイヤモニターの受信機を一体化したベルトパックは、コントロール信号とマイナスワンを受信し内蔵 DSPでモニターミックスを作る。ボーカルフォールドバックのディレイを軽減出来きそうだ。DSPがハイスピード化すれば直接RF帯域でエンコード/デコード出来ると聞いた。現在でも携帯電話はワンチップで圧縮したデジタル変調波を送受信している。小型化は出来そうだ。
次は何がくるか、演出家や歌手は何を思いつくのか、そのとき「大丈夫こんなのありますよ」と言ってみたい。
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