今を去ること約35年位か、当時私がテレビのドキュメンタリー番組の録音を担当していた頃の話だ。勿論まだTV界にENG革命が始まる以前のことだから、当然フィルム取材だ。カメラはアリフレックスのB.L。私の録音機はNAGRA 4.2L、同時録音だ。
取材の状況はレポーター2人が歩き回りながらのレポートをするという設定だ。
こうなれば私の用意した機材はワイアレスマイク(400MHZ帯)2本で決まりだ。
因みにNAGRAの入力はマイクレベルの入力が2本のみである。
いざ本番、どうも片方のワイヤレスマイクの調子が悪い。時折シャーシャーの離調ノイズが激しい。遂にはレポーターのトークも絶え絶えにしか聞こえなくなってしまった。しかも悪いことにどっちのワイヤレスマイクが不調なのかよく判別がつかない。
恐る恐る片方のVo1を下げてみた、まだシャーシャーだ、もっと下げた。とうとう何も音が無くなってしまった。つまり正常のほうのVo1を絞っていたのだ。
何とも恥ずかしい思い出だ。ワイヤレスマイクに関する失敗は数え切れない程あるだろう。しかしこれは前述の通り、35年も昔の私のトラウマ話だ。
つまりそれほど当時のワイヤレスマイクというものの信頼性が低かったということだ。翻って今はどうだろう。
特ラ連主催の功績賞の作品などを拝見するにつけ、30ch以上のワイヤレスマイクの同時使用などというオドロキの時代になっている。それに加えてデジタルワイヤレスマイクの時代の到来だ。ひょっとしたら夢の100chだって可能だろう。そしてこれによって演劇の表現方法が大きく変革するのではないだろうか。私の35年前のトラウマ話などはおとぎ話のように遠くなりにけりだ。ワイヤレスマイクの無限の可能性に乾杯!!特ラ連の設立20周年に乾杯!!
略歴(JPPA 理事)