周波数移行に関する情報(4)

特定ラジオマイクは、現行の周波数からホワイトスペース等の他周波数へ移行します。周波数移行に関する最新情報や用語解説、会員からの疑問などを紹介するコーナーです。

  • 機 器
     
  • 「SHURE ワイヤレスセミナー」でホワイトスペース対応機器を発表

 平成25年2月20日、富士ソフト アキバプラザ(東京都千代田区)にて「SHURE ワイヤレスセミナー」が開催されました。このセミナーは、代理店のヒビノ株式会社と音響機器メーカー「SHURE」の日本法人であるシュア・ジャパン・リミテッドの共催にて開かれたもの。特定ラジオマイクの周波数移行に関する解説や新製品発表なども予定されていただけに、会場には多くの人が詰めかけました(セミナーは午前と午後の2回実施)。周波数移行に対する、業界全体の関心の高さが伺えるのではないでしょうか。
 セミナーは3部構成となっており、その内容は以下のとおりです。
T「特定ラジオマイクの周波数移行」
 シュア・ジャパン・リミテッドの沢口宙也さんによる講演。移行先周波数がどのようなものか、移行までのスケジュール、補償に関する内容など、周波数移行に関する基礎的な解説がありました。
U「Frequency Coordination」
 米国でRFエンジニアとして活躍するヘンリー・コーエンさんによる講演。多チャンネル運用といった周波数コーディネーションをする上で必要な、基礎知識や考え方が中心の内容となりました。相互変調のメカニズムや計算方法、アンテナの設置方法、フィルタなどについての他、ラジオマイクに干渉する恐れのある電子機器の紹介もありました。
V「新製品発表」
 ハンドやボディパック、レシーバを含めたアナログワイヤレスマイクシステム「AXT ワイヤレスマネージメントネットワーク」の発表。現在は、現行のA帯とB帯に対応した同モデルが発売されていますが、今回、周波数移行先である“ホワイトスペース”に対応したモデルが発表されました。対応周波数帯は、470〜698MHzを4つのブロックに分けてカバーしています(※)。
発売は、平成25年夏頃を予定。周波数移行後、特定ラジオマイクの専用波となる710〜714MHzはカバーされていませんが、いずれ同周波数帯に対応したラジオマイクも製品化したいとのことでした。
※ @470〜530MHz A518〜578MHz B578〜638MHz C638〜698MHz どの周波数帯のモデルも、重さやバッテリー持続時間は変わらないとのこと。
セミナー会場の様子(午後の部)。セミナーは午前と午後の2回開かれたが、立ち見が出るほどの大盛況振りだった。
講演するヘンリー・コーエンさん。ラジオマイクを扱うにあたって知っておきたい知識の目白押しで、とても有意義な内容となった。 会場には発表された新製品も展示されており、実物を手にとって確認することができた。
ハンドタイプの送信機「AXT200」。ディスプレイの付近には、対応する周波数帯が表示されていた。
2ピースタイプの送信機「AXT100」も展示されていた。
  • 補償
     
  • 日本舞台音響事業協同組合が周波数移行に関する講演会を開催

 平成25年3月22日、八芳園(東京都港区)にて、日本舞台音響事業協同組合による「基調講演/700MHz帯周波数移行に関する説明会」が開催されました。これは、同組合の通常総会を記念して開かれたもので、会員を中心とした約70名が参加。講師は、移行に伴う補償の窓口となる「(一社)700MHz利用推進協会」の河野誠さん(専務理事)です。
 はじめに、現在の携帯電話の現況と周波数がひっ迫している旨の解説。そして、協会の設立経緯や概要が紹介され、特定ラジオマイクがどの周波数へ移行するかという基本的な説明がありました。
基調講演の様子。説明される内容には補償など興味深いポイントも多く、参加者は真剣な面持ちで聞き入っていた。
 その後、「終了促進措置」の概要とスケジュールでは、移行過程において携帯電話と特定ラジオマイクが共用しながら移行する新スキームを解説。共用するにあたっては、「特定ラジオマイク免許人の合意を必要とする」旨が説明されました。
また移行のスケジュールとして、現行周波数帯における特定ラジオマイクの法律上での使用期限は2019年3月末とした上で、認定開設者側の目標としては2015年3月末であり、この目標で総務省へ計画を提出している以上は、2015年3月末に移行を完了させたい立場であることが強調されました。なお、移行への第一段階である「特定ラジオマイク(A型ワイヤレスマイク)の周波数移行に関する大切なお知らせ」については、97%の到着率とのことです。
 補償の対象となる無線設備としては、2014年3月31日までに“免許申請”された現行周波数帯の特定ラジオマイクであることが説明された他、周波数移行の手順については、各免許人の事情に合わせて柔軟に対応したいとしました。
また「免許人様へのお願い」として、個別訪問の際に現物確認をしたい旨や、無線局免許状や固定資産台帳といった所有物を確認できる書類をあらかじめ準備してほしい旨を要請。口頭で各メーカーの新周波数対応マイク機材の開発状況も報告されました。
 最後に
質疑応答があり「費用負担の方法として、現物給付と現金給付はどのように選ぶのか?」や「機材の価格交渉は免許人で行うのか?」といった質問が出された他、「機器の補償を受けると受贈益が発生し、税制面で免許人の負担が大きくなる場合があるのでは?」といった声も上がりました。
講師となった(一社)700MHz利用推進協会 専務理事の河野誠さん。
  • 補償
  • 推進協による各免許人への個別訪問が始まる

 平成25年3月中旬、(一社)700MHz利用推進協会(以下、推進協)から特定ラジオマイクの各免許人へ、新周波数帯に対応した機器への補償に関する通知文「特定ラジオマイク(A型ワイヤレスマイク)の周波数移行に関する大切なお知らせ」が郵送されました(新規開局の一部免許人については後日郵送となる)。その次の段階として、平成25年4月下旬から、推進協のスタッフが各免許人の元へ訪問する「個別訪問」が始まります。
 個別訪問の内容としては、終了促進措置の概要や周波数移行の手順についての説明、送信機や受信機といったマイク機材の現物確認などになるとのことです。
 この個別訪問が始まることによって、ラジオマイク機器の補償に関する交渉が実質的にスタートしたといえます。今後のトラブル防止のためにも、推進協側と話し合った内容については、適切な方法で記録しておくとよいでしょう。 講師となった(一社)700MHz利用推進協会 専務理事の河野誠さん。
  • 運用調整
  • チャンネルリスト 公表遅れるも間もなく公開予定

『特ラ連レポート 131号』で既報のとおり、まもなく総務省から「チャンネルリスト」が公開されます。
「チャンネルリスト」とは、周波数移行先のひとつである“ホワイトスペース”の利用が想定される場所を対象に、地上デジタルテレビジョン放送に影響を与えず利用できる周波数を明示したリストのこと。ホワイトスペースにおいて特定ラジオマイクを運用するには、一次業務である地デジ放送に影響を与えないということが前提となっているので、特定ラジオマイクの免許人(ユーザー)は、チャンネルリストにある場所・周波数の範囲内で免許を受けられるというわけです。
「どの場所でどのくらいのチャンネル数が使えるのか」ということも分かるチャンネルリストですが、当初、公開予定は平成25年3月末でした。しかし、その予定は遅れている模様(平成25年4月17日現在)。とはいえ、総務省によると「近々には公開できる」とのことなので、間もなくチャンネルリストを確認することができそうです。
 なお、チャンネルリストは、総務省のWebサイト上(http://www.soumu.go.jp/)にて公開されるとのことです(公開する方法の詳細は未定)。
特定ラジオマイクの最新情報が分かるセミナーを開催!

 情報通信の普及・振興を図ることを目的に設けられた「情報通信月間」。その参加行事として、特ラ連と関東総合通信局の共催でセミナーを開催します。「特定ラジオマイクの電波行政について(仮)」と題して、総務省の担当課による特定ラジオマイクの最新情報を紹介する予定です。開催は平成25年6月下旬、場所は関東総合通信局(東京都千代田区)の会議室を予定しています。詳細は後日、特ラ連Webサイト(http://www.tokuraren.org/)などでお知らせします。

平成24年度「情報通信月間」の参加行事として行われたセミナーの様子。