さて、船旅の醍醐味のひとつは、キャビンで朝目覚めると、新たな寄港地に連れて行ってくれる事です。朝、眠い目を擦りながらデッキに出てみると、朝の空気の中に見たことの無い異国の風景が飛び込んでくる、大きな近代的なピレウスの様な港もあれば、キュラソーの様に船の長さより短い桟橋だけの港もありました。
船の目前に数千ものカラフルな色合いのスラム街が山肌に張り付くベネゼエラのラグアイア港、ギリシャのサントリーニ島は、断崖絶壁の島で着岸出来る港がなく、テンダーボートと呼ばれる小舟で島に上陸します。
どこの港も魅力的な風景でこれから訪れる異国での小旅行を期待させます。
前夜には、船内の劇場で、明日訪れる寄港地のガイドが観光やローカルフード、治安、地図などをレクチャーされ、これから訪れる寄港地での小旅行を空想し期待がふくらみます。
寄港地で約1000人の乗船客は、余裕のあるガイド、通訳付きのツアーバスや、船内で知り合ったグループや個人でガイドブックを片手に街を探索する人達が、船の脇にある弦門と呼ばれるタラップから降りて税関に向かいます。
中には持ち込んだ折り畳み自転車で街を探索したり、持参の釣り竿で岸壁釣りを楽しむ釣り好きなど、寄港地での過ごし方は、工夫と懐次第で様々に楽しみます。
観光船目当てのタクシーからボラれない為の値段交渉は、語学力よりもドライバーに負けないボディーランゲージ交渉力がデスカウントに結び付くと知りました。
今回のオーシャンドリーム号で航海し訪れた寄港地を列挙すると22か国23寄港地となります。
横浜、神戸、マレーシア(コタキナバル)、シンガポール、スリランカ(コロンボ)、スエズ運河通航、キプロス(リマソール)、ギリシャ(サントリーニ島、ピレウス)、イタリア(カタニア)、スペイン(モトリル)、ポルトガル(リスボン)、フランス(ルアーブル)、ドーバー(英国)、ドイツ(ハンブルグ)、スエーデン(ヨーテボリ)、ロシア(サンクトペテルブルグ)、フィンランド(ヘルシンキ)、デンマーク(コペンハーゲン)、ノルウェー(ベルゲン)、ゾグネフィヨルド遊覧、アイスランド(レイキャビック)、カナダ(プリンスエドワード島)、ベネゼイラ(ラグアイア)、キュラソー(ウィレムスタード)、パナマ(クリストバル)、パナマ運河通航、グァテマラ(プエルトケツァル)ハワイ(ホノルル)、横浜
訪れた寄港地の中でも、記憶に残るのは、素晴らしい自然の風景や歴史遺産と共に、現地の人々と関わりをもった事柄が記憶に残りました。
とりわけ、印象深い寄港地を紹介します。
コロンボ:
訪れた23のどの寄港地も初めての体験で魅力的でしたが、3つ目の寄港地
コロンボでは、「スリランカで宝石をゲットしよう!」と言う鉱物マニアの乗客の自主企画に参加しました。約1年前から現地の国営鉱石採掘会社の社長に嫁いだ女性とコンタクトし実現したものでした。
小型バスでスコールの中を約3,4時間乗り、山奥を歩き、丸太だけの川をおっかなびっくり渡り着いた採掘場所は、竪穴の井戸の奥からポンプで吸い上げた大量の土砂からサファイアの原石を探し出す、一攫千金を夢みた人々が数百年も前から同じやり方だ。
コロンボのスーパーで買った大き目のプラスチック皿で、砂金採りの要領で石英の土砂をすくい、目を凝らしてブルーサファイア夢見て、熱帯サウナの中、汗を拭きながら何度もこれはと思った小石を繰り返し現地の人に見せるが、首を横に振るだけの連続、どうみても足元の小石と見分けがつかないが、それでもやっと幾つかのサファイアの原石をゲットして、トレジャーハンターになったような気分で帰船しました。
現在、宝物として自宅に鎮座しています。
ソマリア沖:
未だに出没すると聞いたソマリアの海賊から自衛隊の護衛艦「あさぎり」に警護され4,5日間の航海は、各キャビンや、デッキの窓はカーテンで覆われ、夜間は海賊に狙われぬ様、灯火管制です。
最上階のデッキチェアーに寝そべると、足元さえ見えない漆黒の闇の中、満天に降る星々に流れ星や天の川まで、宇宙の中では地球も砂漠の砂粒の様な存在なのでしょうか、ひと時、果てしない宇宙の壮大さとちっぽけな自分を感じてしまいます。
スエズ運河とパナマ運河:
スエズ運河の航海の始まりは、真っ赤な朝焼けの時、特別の時だけ開かれる船の最前部デッキには乗客が集まり、投錨した大きな錨を巻き上げ機がゴロンゴロンと大きな音を立てて巻き上げ出航です。
紺碧の空との乾燥した気候の中、左舷はアフリカ大陸、右舷はアラビア半島でしょうか、船の最後尾のデッキからの大自然の風景と船の航跡を飽きずに見ていると前方には隔たれた両大陸を結ぶ地平線まで続くような巨大なエジプト・日本友好橋は、15年前ムバラク大統領の時代に日本の支援により建設されたそうです。
巨大な橋脚を見上げると、欄干には日本とエジプトの国旗のモニュメントがあり、遥か遠い所で見る日の丸に誇らしさを懐かしさ感じます。
スエズ運河の航海を一日続けると、次はまだ見ぬ想像を掻き立てる地中海です。
カリブ海と太平洋を結ぶパナマ運河は、幾つもの閘門で仕切られ、船は注水と排水を繰り返し、古い日本製電気牽引車に引かれ進みます。
百年以上も前にアメリカにより十年もの歳月と伝染病と多難の工事により建設され戦争の原因ともなり苦難の末に開通したそうです。
このパナマ運河を通過出来る船の幅32.3mに作られたパナマックスは、全世界の船の規格となっているそうです。
パナマ運河の途中にあるガトゥン湖を通過し丸一日かけて航海していると、所々で新たに建設されている新パナマ運河が見えます。
この新パナマ運河は中国が資本投下し建設され、運河の幅も広がり今後、世界の建造される船は新パナマックス規格の幅となる様で、オーシャンドリーム号が航海した次の日に開通したそうです。
途中寄港した、破綻したギリシャの巨大なハブ港のピレウスの買収と共に世界のこんな場所でも中国の世界規模で進められている一帯一路政策を実感します。
サンクトペテルブルグの美人学生:
スエーデンのヨーテボリからオーシャンドリーム号はバルト海ネヴァ川を3日かけ遡上し訪れた、プーチン大統領の故郷でもあるサンクトペテルブルグでは、日本語を学ぶ学生と交流するツアーに参加しました。
街並みには壮大なエルミタージュ美術館、広い通りにクラシックな路面電車が走り、街中が歴史美術館の様で美しさはヨーロッパで一番にたとえられる。
と言うことは世界一の歴史ある美しい街並みだ。
バスで到着した大学は立派な宮殿の趣、案内され建物に入ると20人ほどの学生が出迎えてくれました。
礼儀正しくてシャイな男子学生に大学の歴史など聴いた後、クループに別れて自己紹介などしましたが、若い美人の女子学生は、たどたどしい日本語で自己紹介してくれました。
皆、日本の最近のポップカルチャーに詳しいのにはビックリ、こちらの古いアニメの知識とギャップを感じながら、美人学生と会話を楽しみメールアドレスなど交換した後、一緒に歴史ある街並みや公園を散策し見送ってくれました。それにしてもロシアの若い女子学生は礼儀正しく、シャイも相まって、
“Очень хорошо!”(オーチン・ハラショー!:素晴らしい!)
今年から通い始めた千葉県生涯大学での講義中に、人間の新陳代謝は、心臓の細胞が約22日間、筋肉や肝臓は約2か月、骨は約3か月で、正常であれば人間の細胞は、約3か月間で全て新しく入れ替わると学んだ。
66歳となり、この先も重ねる歳と共に確実に衰える体力、また、知らず知らずのうちに弱まる行動力とともに、保身と安定を選択する様になるだろう。
物事への興味や好奇心、探求心を何時まで持ち続ける事が出来るか分からない・・・
この気持ちは持ち続けたいと思うのだが・・・
今は、密かに、アフリカマダカスカル島の奇妙なバオバブの木、世界最古の広大な赤いナミブ砂漠、モアイ像が点在いする絶海の孤島のイースター島、南米南端常に強風で荒涼とした最果ての地パタゴニア、最南端吠える40度、狂う50度、絶叫する60度のドレーク海峡など、訪れたいと空想している。
何時か!