今回私のような若造が寄稿させていただいて良いものか考えたのですが、私も大学在学中に日本楽器製造梶i現ヤマハ梶jのスタジオのアシスタントにバイトで潜り込んでから今年で41歳。もう20年もこの世界に居るのだと…………….普通の会社員なら管理職?まあ現に同級生はそのような職についているようですが。
ならば、これを読む若いエンジニアも居ることだしということで、今回寄稿する決心をしたのですが、いざ原稿を書こうと準備をし始めると何を書いていいのやら.......内容を考え始めると諸先輩の顔がちらつき、書くことが恐くなり始め、後で、何言われるかと思うと必然的にPCのKEYを打つ手が止まり........そこで、多分この「特ラ連レポート」を読まれている方のなかにいらっしゃるであろう現場の技術者のために、ワイヤレスマイクの多チャンネル使用時のチャンネルプランと測定についても触れさせていただいて、私のような若造が寄稿する事をお許し頂ければと。
大学時代は映画録音そして音楽スタジオへ
さて本題に入ることにさせていただきます。私がプロフェッショナルなる高級なマイクロフォンを扱うようになったのは、スタジオのアシスタントになる前、日本大学芸術学部映画学科に入学し八木教授の下で映画録音の教えを頂いた時になります。Sennheiserの“ガンマイク”とSONYのC-38!ろくに特性も何もわからず実習での16mm撮影でナグラのオープンデッキに台詞の録音をしていたのを思い出します。ワイヤレスマイクを使ったのもこの時期にTAMURAの40MHzでした。とりあえず頭に浮かぶのは“サオ”が重かったのと、“ザアーザアー”とノイズがすぐ出ることですか、そして、バイトで入ったYAMAHAのスタジオでノイマン、ショップス、もちろんシュア‐にAKGなどを見たのも触ったのも初めてで「プロだー」と感激感動し、恐る恐るマイクスタンドにセットしたものでした。時代の流れというものはよい事もあるもので、当時音楽華やかな頃で、テレビでは毎日のように歌番組が放送され、まだフルバンドの生オーケストラで各テレビ局が放映していた頃です。
音楽ミキサーへ
今では良くてカラオケ、さらに口パクは当然のようになって残念に思う方々も多いでしょうが。YAMAHAもその当時まだ“イーストウエスト”というバンドコンテストを主催していて(カシオペア、サザンオールスターズ、などを輩出)、当然のごとくのようにYAMAHA直営のスタジオは、連日のようにDEMOテープのレコーディングで、エンジニアが廻せなくなり必然的に入りたての私にもチャンスが巡ってきました、3ヶ月程のティーボーイ(メインはコーヒーを入れることと出前を取るのが仕事だったので)のあと、アシスタントにデビューでき、世渡り上手な私は1年余りでコンソールの前に座ってしまいました。その頃のお気に入りは、KickにエレクトロボイスのRE-20、ドラムのTopにショップス、ピアノにノイマンのU-87だったと思います。
私の世代とその上の先輩方には多分ごく普通のマイクアレンジだと思いますが、今の若い方はどう思うでしょう。今でこそギターアンプの前に大型フラムのコンデンサーマイクを置くことが普通になってきたり、ドラムにコンデンサーマイクを立てるのも普通ですが、まだ当時は、スタジオに拒否されたり、音圧のある楽器用とヴォーカルや弦を録るものを区別していた頃です。その中でも私が一番好きだったのはSONYのC-536Pというコンデンサーマイクでした。タムタムやスネアに使っても音圧に耐え素直でマイルドな音だった気がします。また海外製品に比べ安価で手にし易かったもので、大胆にドラムに使えたと言う背景もあります。後で触れますが、今でこそ国内メーカーのオーディオテクニカなどから10万円を切る大型フラムのコンデンサーマイクがでていますが、当時のシューアーのSM-58が定価で5〜6万円していたと思いますから、SONYのC-536Pは海外のダイナミックマイクが買える価格のコンデンサーマイクだったので重宝していました。
その後は、スタンダードにごく普通のマイクアレンジで仕事をしていましたが、1990年代に入って変化が起きました。ひとつは電波法の改正により今まで使用していたワイヤレスマイクが新しい物に替えなくてはならないという、いままでの慣れ親しんだ物との決別の不安でした。そしてもうひとつ、90年代の後半、海外からの来日アーティストのPAエンジニアたちがMADE IN JAPANのコンデンサーマイクを持ちこんで来るようになつたことです。
オーディオテクニカとの出会い
現在の私の仕事、特にワイヤレスの多チャンネルに触れさせていただこうと思います。
私は、現在フリーランスのエンジニアとして、レコーディング・PAのエンジニアリング、SIMチューニングエンジニア、潟Iーディオテクニカが東京・湯島に所有するastro studioのチーフエンジニア、そして、ワイヤレスマイクの多チャンネル使用のプランと測定を生業としています。 astro
studioのチーフエンジニアになったきっかけが電波法の改正でした。電波法の改正の直後、日比谷野外音楽堂でワイヤレスマイク6波の同時使用をしなければならないロックコンサートのハウスオペレートの仕事がありました。その事を当時、中学時代の同級生で潟Iーディオテクニカの特販部の水野政夫君に相談したところ快く機材とワイヤレスの技術エンジニアの小諸氏を現場に送りこんでくれました。まだ800MHzのワイヤレスマイクは各社B帯が主流の商品だったころなので、当日はコンサート終了まで何時落ちるのか心配でしたが、心配をよそに問題無くコンサートは終了、そして音も満足のいく音になりました。
それからしばらくして、私が来日アーティストの仕事でモニターオペレートをしていた時、ある外人オペレーターが聞いたことの無いマイクを持ちこんできました。それがオーディオテクニカ社製のマイクでした。するとコンサート会場に水野君と白髪混じりの細身の紳士が居るではないですか、話をするとその外人オペレーターはエンド−スエンジニアで、隣の紳士はオーディオテクニカ社の取締役で国際部の阿部部長ということでした(阿部氏は今年オーディオテクニカを定年退職されました。紙面を借りてお疲れ様でしたと言わせていただきます)。マイクロフォンメーカーがエンド−スをしているのはめずらしく、先ほどのワイヤレスマイクの件もあり私はますますこの会社に興味を持ちました。その時、私のオペレートする現場でマイクを使ってみないかと言う話を頂き、私はすぐにOKをだし、コンサートツアーに10数本のマイクを持ち歩くようになりました。
フリーランスとしての現在
そしてますますオーディオテクニカとの付き合いが深まり、1999年DREEMS COME
TRUEのコンサートツアーのマイクロフォンをサポートすると言う話しが持ち上がり、私に現場でのサポートの依頼がきました。そこで問題になったのがワイヤレスを28波使用することでした。もちろんその管理も現場サポートをする私の仕事になりました。まず必要になったのが電波の測定でした。私は以前、日比谷野外音楽堂の時にお世話になった技術の小諸氏に高周波測定機の読み方、電波のノウハウを教えて頂きそのおかげで仕事もうまくいきました。もちろんチーフエンジニアであった(株)ケンテックの近藤氏、ヒビノサウンド(株)の橋本氏、角谷氏、吉澤氏その他スタッフの方々、潟[ネラル通商の河端氏の協力があったからこそですが、その後このコンサートでのワイヤレスマイクの測定に興味を持っていただいたPA会社から測定とプランの仕事を頂くようになりました。同時に私のいままでのエンジニアの仕事以外に、オーディオテクニカのエンド−スのサポートとマイクロフォンのアドバイザーと言う仕事が増えました。そして、商品の開発と音楽の普及に向けてスタジオを新社屋に作りたいので手伝ってもらえないかと松下和雄社長から話を頂き、スタジオの建設と同時にチーフエンジニアとして現在に至ることになったのです。
現場でのワイヤレスマイクの測定
さてもう私の事はここまでにして、ではここに測定機で見た電波状態と多数はのときの測定システムの写真をお見せします。
上図左が外部からの干渉する電波を受けている時、右が改善していくらか良好になった時の高周波測定機の画像です。この時は、大型LEDの出す電波が干渉の原因でLEDから離れた所に八木アンテナを立て受信することで対策をしました。この測定のあとLEDメーカーは改善してこのトラブルはなくなりました。この測定で得られる情報は、まず使用環境での電波の状態、使用機材のNG、外来波の有無などです。ではそこで起こり得る問題で今までで一番多かったトラブルの原因は何かと言えば、アンテナ線のNGがダントツに多いのが現実です。測定に行くとアンテナ線を100Mも伸ばしていたり、導通はあるものの30dbもゲインが落ちるケーブルを使っていたり、と初歩的な問題が多いいようです。その次に多いのはアンテナと受信機の設置場所です。以外かもしれませんが多数波の運用でも私はアンテナを基本的に2本しか立てません。特にアンテナにブースターを使用しているときにはこの方法がベストです。なぜならブースターどうしが干渉するからです。落ちるので見に来て欲しいという依頼で現場に伺うと、アンテナどうしの間隔が30cmも空いていなかったりするのをよく見かけます。この場合最低でも1m間を置くと問題が解消します。こういった問題は測定機ですぐにわかるので、解決するのは簡単です(ただし時間は要しますが)。まだまだ、いろいろな問題もありますが、A帯だからOKと言う過信が原因の場合も多いので、ワイヤレスマイクの事を再認識していただければなあと思う時もあります。とりとめのない寄稿内容になりましたがご参考になりましたでしょうか。何かワイヤレスのシステムでご質問があればastro@audio-technica.co,jpにEメールいただければお答えできる範囲でご返答したいと思います。
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