社団法人デジタルラジオ推進協会
東京事務局 技術部長 近江克郎
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 地上デジタルテレビジョン放送がもうすぐ放送開始ということで、テレビや新聞で「2003年(今年)12月からUHF帯で放送を開始」とか、「アナアナ変換がまず必要」とか、「2011年7月にはアナログテレビが終わる」とか・・・ご承知の方も多いと思いますが、地上デジタル音声放送(われわれは、デジタルラジオと呼んでいます)については、ご存知ない向きも多いかと思います。デジタルラジオとその開局に向けた準備状況について紙面をお借りしてご紹介します。
 デジタルラジオは、地上デジタルテレビより若干早い今年の10月に放送を始めます。放送といいましても、東京と大阪からテレビの7チャンネルの周波数で実用化試験放送を始めるわけで、本放送ではありませんが着々と放送開始に向けて準備が進んでいます。デジタルラジオの本放送は、アナログテレビのVHFの波が空いたとき(2011年7月)が開始と見なされています。
 ところで、アナログテレビは地上デジタルテレビに移行するため2011年になくなる・・と言われていますが、デジタルラジオが本放送になってもアナログラジオ(中波放送やFM放送)はなくなりません。デジタルラジオはこのまま行けば魅力的なモアチャンネルになります。
 デジタルラジオのサービス内容としては、ご承知のようにCD並みの高品質の音声が主体になり、生活情報や交通情報、ニュースなど多彩な情報サービスが考えられますが、マルチメディア方式により静止画や簡易動画などにより情報を目で見ることができるようになります。
 地上デジタルテレビでご存知と思いますが、デジタルラジオの変調方式でもOFDM(直交周波数分割多重)を使用します。OFDMはマルチパスに強く携帯や車載の受信でも安定した受信が期待できる方式です。
 次に、デジタルラジオの放送方式について紹介します。地上デジタルテレビは、アナログテレビと同じ6MHz帯域幅でNHK、民放各社がサービスを始めます。OFDM方式では、6MHzを14の帯域に等分割し、分割した1つをセグメント(約430kHz帯域幅)と呼びますが、地上デジタルテレビは13コの連続したセグメント(5.6MHz幅)で放送するのに対して、デジタルラジオの放送は、1セグメントまたは3セグメントの帯域幅だけで放送ができます。つまりデジタルラジオの放送形態としては、1セグメント形式と、連続した3つのセグメントを使用する3セグメント形式の2種類があります。 3セグメント形式のデジタルラジオは、階層伝送が可能となり電波伝搬の状況に応じて伝送容量を変化させることができます。
 情報の伝送容量としては、図1に示すように、1セグメントですと約300kbpsで、高品質のステレオとデータ放送が可能になります。3セグメントは、その3倍の900kbpsということになり、多チャンネル音声やデータ放送、簡易動画も受信できます。伝送パラメーターの設定によってはさらに大きな伝送容量も可能です。
さて、デジタルラジオ実用化試験放送では、各形式の放送をどのようにテレビの7チャンネルで放送するかといいますと、「1セグメント形式の放送」を8つ束ねて(周波数軸上に並べて)放送します。これを連結送信といいますが、デジタルラジオ特有の送信方法です。大阪では「1セグメント形式の放送」だけを考えており、この通りですが、東京では、5つの「1セグメント形式の放送」と1つの「3セグメント形式の放送」を連結送信します。1セグメント形式の放送と3セグメント形式の放送の番組を制作するグループを図2に示します。

 電波の予備免許の概要ですが、送信電力は、東京は800W、大阪は240Wです。送信場所は、東京は東京タワーから、大阪は生駒山で、放送区域は東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪地区は、大阪、京都府、奈良、兵庫です。
 次に、デジタルラジオの実用化試験放送を実施していくコンソーシアム、すなわち社団法人 デジタルラジオ推進協会(通称DRPと呼んでいます)について紹介します。DRPは、2001年10月に設立されましたが、目的は簡単に言えば実用化試験放送を実施して地上デジタル音声放送の普及・発展を図ることです。当協会の会員数は、現在、正会員が34社、賛助会員が47社です。事務所は、東京が東京タワーのすぐ近くの芝公園スタジオビル7階にあり、大阪はツイン21 MIDタワーの21階です。DRPには正会員で構成される各種の委員会があり、DRP業務遂行上重要な事柄や方針を審議して決定しています。
 また、受信機の開発を支援するデジタルラジオ受信機テストセンターがDRP技術部所管のもとで活動をしています。
 次に技術の規格の話です。地上デジタル音声放送を実施する上で、技術的な標準規格や運用規定が必要になります。地上デジタル音声放送の標準規格は、ARIBで審議され、「地上デジタル音声放送の伝送方式」(ARIB STD-B29)として発行されていますし、あわせて「地上デジタル音声放送用受信装置」(ARIB STD-B30)も発行されています。
これらの標準規格は広い範囲をカバーしているため、実際の運用に当たっては、パラメーターを絞り込む必要があります。DRPでは、当協会の技術委員会がこの運用規定案を策定し、ARIB規格会議での審議を経て「地上デジタル音声放送運用規定」(ARIB TR-B13)として2002年5月にVer.1.0が発行されました。
情報源符号化を図3に示します。またTR-B13に規定されている運用の概要を図4に示します。
 最後に、実用化試験局開局に向けた準備状況ですが、スケジュールを図5に示します。空中線および送信機設備やマスター設備等の放送設備の建設は2003年6月までに終了します。
 送出・変調設備、いわゆるマスター設備は、事務所に隣接した部屋に設備中です。マスターでは、各セグメントグループから送られてきた完パケTS(MPEG2トランスポートストリーム)を連結してOFDM変調を行います。
 送信機設備は、東京タワー大展望台下のデジタル送信機室(新設)に建設中です。将来のサービスエリアの拡大を考えて増力を考慮した送信能力を備えています。
 空中線は、2L双ループアンテナ2段9面で、東京タワーの特別展望台のすぐ下に設置されましたので、タワーの下からでもご覧いただけます(図6)。
以上簡単ですが、デジタルラジオとその開局準
備状況について紹介しました。今後もデジタル
ラジオをよろしくお願いします。
(http://www.d-radio.or.jp)
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