特ラ連セミナーでFPUについての講義は過去2回行ってきました。特定ラジオマイクと同じ周波数でありながら、なじみがないため理解しにくい部分があります。
 復習の意味でまとめてみましたが、セミナーが東京での開催であったため、参加出来なかった会員のみなさんの参考になればと思います。
 FPUにはアナログとデジタルの2種類があります。
 デジタルの800MHzOFDM−FPUは1997年に電波産業会(ARIB)で規格化が行われました。これはマルチキャリアというまったく新しい方式で、周波数を有効利用すると共に、干渉性が少ない、移動中継に適した800MHzであること、フェージングに強いことなどから、最近映像中継に盛んに使われています。
1 FPU
 FPUはフィールド・ピックアップ・ユニットの略で、マラソン、野球などのスポーツやニュースなどの映像中継に使われる装置です。FPUにはアナログとデジタルの2種類があります。
 周波数帯は、770MHz〜806MHzで、この中に4ch分のFPUがあります。
 そのうち、779MHz〜788MHzはWL(特定ラジオマイク)のA2帯、797MHz〜806MHzはA4帯と同じ周波数になります。
 送信機の出力はFPUが最大5Wで、WLは10mwですから500倍にもなります。ですから至近距離で同一の周波数を使用すればFPUの電波でマスクされ使いものになりません。フルパワーのとき、隣接チャンネルでラジオマイクの受信機の熱雑音より10dB低い干渉電力の時は約1Kmの調整距離を必要としますが、干渉電力を熱雑音程度に仮定すると野外においては約600mでも大丈夫とお話をうかがいました。FPU出力やWL受信感度を下げることによりこの数値は変わってきます。
 デジタルFPUは変調方式によって数種類に分けられます。
 現在800MHzで使われているのはOFDM変調(Orthogonal Frequency Division Multiplexing 周波数直交分割多重変調)方式です。
 特ラ連へ送られてくる放送局からのFPU使用連絡はアナログよりOFDMが多くなっています。
 このOFDMは周波数直交分割多重変調といって、9MHz幅に544本のキャリアを立て、デジタルデータを分散伝送するわけです。このキャリアのデータに不都合が生じた場合、他のキャリアから復調されたデータをもとに誤り訂正します。またデータはMPEG2で圧縮されています。このようにデジタルの利点が生かされています。
 もう一つ多値FM方式(多値=たち、と読む)というのがありますが、0と1をレベルを持つアナログ的要素をもった信号に変換、FM変調する方式です。また、シングルキャリアのQAM方式があります。これは、0と1のデジタル信号を位相と振幅に割り当て、例えば64ポイントのデータに変えて伝送する方式です。共にSHF帯(6.5GHz〜13GHz)でハイビジョンの伝送に使われています。
2 特定ラジオマイクとFPUの干渉
 アナログFPUは図のように中心周波数(4帯では801.5MHz)を軸として左右が下がっていますから、ある程度の距離があれば、受信機の感度を下げる、電波の方向を確認するなどで、両サイド(つまり4帯ですと、797MHzから上、806MHzから下)で数本使えるようです。しかし、デジタルはご覧のように殆ど水平になっており、544本のキャリア全て電波を出していますからアナログのようにはいかないでしょう。
 OFDMのデータ伝送の時、9MHzいっぱいに使わない8.5MHzでしたら左右に一波ずつは使えるというお話を聞きました。
 8.5MHzですと、9MHz−8.5MHz=0.5MHz、0.5MHz÷2=0.25MHz、0.25MHz=250KHzとなります。
 上記のように、放送局から毎日のようにFPUの使用連絡が届きます。また、屋外使用のA帯の連絡も増えてきました。会員の屋外使用は主要都市の放送局の幹事社に連絡しております。このことは会員の中でも認識されていない方がおられるようですが、レポート等でお知らせしておりますので、お読みいただければ幸いです。また新入会のおりには必ずそのことは伝えてあります。
 お互いの立場を尊重し、クリーンな環境のもとで公共の電波の有効利用をはかりたいと思います。ご協力をお願いいたします。
 ’99年セミナー「FPUのデジタル化とワイヤレスマイク」井野栄信氏(現NHK広島), ’01年セミナー「ラジオマイクとFPUとの干渉について」伊藤泰宏氏のお話からまとめました。
大野 正夫