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50周年記念ということもあり、各種イベントやセミナーが企画され、賑やかでした。
 5日の夕方から記念祝賀会があり、挨拶された中島会長の言葉から、
 昭和27年、音響芸術学会の名称でスタートし、中島健蔵元会長、井深大前会長の音頭で、忠実な再生音の実現とオーディオの活性化を提唱された。とオーディオ協会の歴史にふれられて、デジタル化等で急速に進むオーディオ界にあって常に先導的役割を果たしてきた。当協会は次の50年に向けて変わりゆく時代を先取りし前進してまいりたい、と挨拶された。
 展示会場においては、1ビットオーディオコンソーシアムではバイオリン4種を録音し、それぞれのバイオリンの音質の違いの比較、またスーパーオーディオCDグループ、先端ディスプレイゾーンは人気が高く、真空管製品は相変わらず根強いファンが多かった。
 昨年好評だった、フォステクスのエンクロージャー自作セミナーは非常な賑わいで、今回はホーンタイプでした。作り終わるとスピーカ付きで持ち帰りOK。すでに裁断してある板材で組み立てるのですが、なかなか楽しそうでした。
 最も興味があったのは超伝導スピーカの音であり、今回歴史的な場面に立ち会うことができました。超伝導とはなにか、という疑問にたいして、東京大学新領域創成科学研究科北澤宏一教授のレジュメによると、金属中の自由電子が低温でクーパー対と呼ばれるペア電子を作ることによって生じる現象、とありました。
 電気抵抗ゼロ、永久電流が流れる、磁場と反発したり、磁場をトラップして(ピン止め効果)磁気浮上などが起こる。このような不思議な動作を音の世界に取りこもうと提案したのが、早稲田大学国際情報通信センター山崎芳男教授で、高効率・エッジレス・ダンパーレスのスピーカが次世代オーディオ機器研究委員会により公開されました。従来超伝導は絶対0度(-273度)に近い液体ヘリュウムでないと使えなかったのが、銅酸化物系で液体窒素温度77K(ケルビン)-196度で作動が可能となり、今回の公開には、液体窒素のボンベを用意し、直径12,3センチのコーン紙の上から液体窒素をジャブジャブとかけて急冷して音を出しました。
 これは従来のスピーカのボイスコイルの部分に新日鉄開発のY-Ba-Cu-O希土類系酸化物単結晶超伝導バルク材QMGという素材をリング状にしてはめておき、その外周に非接触の駆動コイルを固定し、それにアンプの出力をつなぎます。この磁気回路部分を液体窒素で冷やすとピン止め効果によって超伝動バ
ルク材が空中に浮き、ある位置で静止します。そして駆動用コイルに流された音声電流の変化によって磁界が変化し、超伝導バルク材はその変化に追随して新たな位置に静止しようと動く結果、振動板から音が出る誘導型のものです。エッジやダンパーがないですから、制動は電磁制動に頼ることになります。直感的に思ったのは、歪みは激減し、立ち上がりはより鋭くなるだろう、ということでした。アンプの片チャンネルには従来のスピーカがつないであり、もう片方に超伝導スピーカをつなぎ、音量に格段の差があることを確認しました。
10dBくらい能率は高いそうです。スピーカは剥き出しですから低音は出ませんが中高音は良い音でした。

 今回の公開に接することが出来たのは非常に幸運でした。
 東大の北澤教授によれば、これでクリーンな地球・自然エネルギーへの道が開けるといっております。なにしろ抵抗値ゼロなのですから、地球規模で超伝導ケーブルをはりめぐらし、砂漠で太陽電池発電した電力を世界中に送電することも可能になりましょう。しかし冷却装置の問題がありますが、これらは人間の知恵をもってすれば時間の問題でしょう。

(社)日本オーディオ協会 次世代オーディオ機器研究委員会 超伝動スピーカWG資料より

 
大野