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特ラ連発足10周年を記念して |
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同時に使えるマイクの本数 三ア 崇郎 (前特ラ連事務局長) |
何の後ろ盾もなく、浮き草のような存在であった特定ラジオマイク利用者連盟は、皆様のご好意に支えられ、平成2年7月17日に設立されてから、はや10年の月日がたち、しっかり大地に根をはることができたようです。 そこで10周年に当たり設立当初から特定ラジオマイクの過ぎ越しを振り返ってみました。 発足時の会員数は零で運用連絡はなし、勿論混信等通信障害もありませんでした。 当時は、同時にほぼ同一箇所で使用できる本数は6本(コンパンダなし)とされており、やがて11本(コンパンダ着き)となりました。 そのころ、大阪で4帯の5WのFPUと10mWの特定ラジオマイクの同時同一箇所使用テストが行われ当連盟も参加し、FPUの電波がラジオマイクに影響する状態や、ラジオマイクの電波がFPUに影響することが実際に確認されました。 特ラ連発足当初、会員増は遅々として進まず、運用連絡はまだ記帳する程のことはなくすべて記憶で事足りました。 旧型のラジオマイクはテレビの空きチャンネルを使用していましたが、UHFテレビがあちらこちらで開局し、使用できる周波数が減り、暫定処置として認められていた免許の要らない旧型のラジオマイクとの併用期間終了になるころは、旧型のラジオマイクが使えなくなるので、同時に使用できる本数が少なくなり、なんとかその数を増やすことが研究されました。 その一つは出力を10mWから1mWに下げ、11波から35波まで増やした製品も発売されました。 これは入出力特性に非直線性部分がある電気回路に、複数の周波数の電波が同時に入ると、その電波が相互に変調をおこし、新しく別の周波数の電波が生じるためで、その大きさは A,Bは入力される電波の大きさ
A,Bは入力される電波の大きさ、γは係数 となります。 相互変調波で生じた同じ周波数で、マイクCを使いますと電波障害を起こしますが、電波Cの大きさと相互変調波の大きさを比べて、Cのほうが大きければ、FM通信の特徴の強い電波が優先する性格で、相互変調波の影響はなくなります。 A×A×B×3γ/4(A×B×B×3γ/4) とCを比べるのですが3γ/4は定数ですから別にしておいてA×A×BとCを比べますとそれぞれ多少は大きさが違いますが A,B,C,はほぼ同じ大きさとみなされます。 A,B,Cが例えば 1としますと相互変調波で生じた波の大きさは A×A×B×3γ/4 2としますと相互変調波で生じた波の大きさは 8×3γ/4 0.1としますと相互変調波で生じた波の大きさは 0.001×3γ/4 A,Bの大きさにより相互変調によって発生する電波の大きさが大きく変化します。そこで10mWから1mW にさげたわけです。 送信電力が少ないことは、使用する場所の電波雑音に影響されやすく欠点となりますが、この考え方は後々多くのマイクを同時に使用するイベント会場などで生かされ、現在ではモーターショーなどでは10mWでありながら11波をはるかに越える多くのマイクが使われております。 他方、やはりもっと安全に使用する要望も強くFPU2帯の周波数をお願いしてこれが許可されました。 ここ数年、ワイヤレスイヤーモニターのステレオ使用の要望が出され、それが認められ特定ラジオマイクのカテゴリーに含まれることになりました。帯域巾はステレオなので110Kよりも大きくコンパンダなしのマイクの帯域巾330Kにふくまれることになります。 ここで、マイクとイヤモニの混用となり帯域巾が110K、330Kの同時使用となり使用する周波数の算出が複雑になってきます。 このように数多くのマイクが希望されますが、それに対応できる周波数がなくこれ以上望む場合は、現在与えられている周波数帯の中で考えなくてはなりません。 800MHzFPUはすでに2年前からデジタル、アナログが併用されています。 特定ラジオマイクもデジタル化しますと大変多くのチャンネルがとれ、また同時に自動的に使用する周波数の選択を致します。 既に携帯電話では周波数拡散による多ch使用が実用化されています。特定ラジオマイクもアナログとデジタルの併用を研究したらどうでしょうか。デジタル化のための遅延時間は零にはできませんが許容できるように短くなるはずです。 特定ラジオマイクもアナログにこだわっていると、狭苦しいなかで大変使いにくいものになってしまいます。すでに日本では船舶通信のモールス通信は非常通信を除いてはなくなってしまいました。 放送業界もデジタル化が進みアナログの放送は間もなく一部の特例となり無くなってしまいます。情報通信の世界は刻々と変化しております。特ラ連も設立10年が過ぎ、新たなる世紀を目前に控え、特定ラジオマイクの使い勝手の良い環境を作るべく努力しなければならないと思います。 |
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