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日  時:平成16年12月1日(水) 13時30分〜17時30分
場  所:NHK青山荘
参加人数:48名
司会進行:田中専務理事 
八幡理事長挨拶
 ラジオマイクというのは一般の電波の中で一番弱いものではないかと思うのですが、これが当たり前のように使えるようになったのは、つい最近のことで、これが総務省の指導、われわれ会員の理解、メーカーさんのおかげで安定してきております。喜ばしいことです。
 本日のセミナーの中から吸収していただいて皆さんのお仕事に役立てばと思っております。
第1部 「功績賞の受賞者は語る」
 「第52回NHK紅白歌合戦のワイヤレスマイク舞台裏」(平成13年度受賞)
  日本放送協会 放送技術局制作技術センター音楽芸能番組技術 梅田 芳政氏

 紅白歌合戦は以前は60%の視聴率を誇っておりましたが、現在は50%くらいでしょうか。この生番組は日頃のノウハウを存分に発揮しております。長い番組はそう多くないのですが、4時間10分となりますと、事前の計画がしっかりしていないと大変です。
 9月頃から準備にはいります。10月頃、第一次技術スタッフが発表になります。11月下旬に出場者の発表がありますが、このあたりは新聞等の記事でご存知と思います。
 ワイヤレスマイクを多用するこの番組で注意しなければならないのは、事前のNHKホールを取り巻く周辺の状況調査です。
 周辺では、この時期にはいろいろなライブがあり、それらが代々木第一体育館、第二体育館、仮設テントハウス(当時はキダム、現在はアレグリアU)、SHIBUYA―AX、BOXXなどで開催されますので、特ラ連から入るニュースは貴重です(現在はNHK中継技術へ送っている)。
 第52回の時は、12月25日付けで、NHKホールにおける無線機と携帯電話の使用規制の要請を、関係者に出しました。通常ホールで使用されている業務用無線機以外の使用規制を要請、アマチュア無線機、ベーカム取材のワイヤレスマイク(400MHz帯、800MHz帯)の使用禁止の要請、携帯電話(800MHz帯デジタル)のホール内での使用禁止の要請等で、ホール内で使用出来る無線機は「特定小電力の無線機と免許を受けている業務用無線機」だけです。携帯電話はワイヤレスマイクにノイズが発生することが確認されていました。
 演出からの構成表をもとに音声用の進行表を作成し、それにもとづいたワイヤレス割表を作ります。この表の注意点として、なるべくワイヤレスの渡りを少なくする、渡りがある場合は2曲以上あける、可能な限り男性用、女性用をわける、声量の大きいヴォーカルは同じワイヤレスマイクで対応する(PAD使用のため)、などがあります。
以上の内容では紅白歌合戦という長寿番組の音声の全体を知ることは不可能と思いますが、その片鱗でも伝われば幸いです。
(編集部:紙面の都合上全体をお伝えできないのは残念ですが割愛させていただきます。)
第2部 「なんでも相談室」〜ワイヤレスマイクを安心して使う為に〜
  司会進行 :技術委員長 飯田幹夫
  相談室講師:吉田英明(綜合舞台)、古沢 誠(NHK)、
        石川正太郎(ゼネラル通商)、五味貞博(松下電器産業)、
        八幡泰彦(理事長)、以上5名。
  (編集部注 講師の方々の意見を総合してまとめました)
飯田技術委員長
 9月から特ラ連の技術委員長を仰せつかりました飯田です。
日頃皆さんがお悩みのこととか、こんな場合どうしたらいいんだろう、というような問題をかかえておられるだろうと思います。今日のセミナーはそのような問題点のうち技術的なことでしたらお答えできるかと思います。
 あらかじめ、こちらでラフなテーマを決めさせていただきましたので、それに沿っていきたいと思います。途中なにかご質問がありましたらお答えする、という方法で進めたいと思いますのでご諒承ください。

 ワイヤレスマイクの基本的な取扱方法、及びその周辺のことなど。
・ 使用上の限界

この特定ラジオマイクは免許期間が5年で、それを過ぎると更新の義務があります。これを特ラ連でお手伝いしているわけです。
ご存知のように、特定ラジオマイクはA帯、A2帯の2種類がありますが、出力が10mWという小さいものです。またそれぞれ9MHzの幅ですから使用チャンネル数も限りがあります。出力は10mWでサービスエリアにも限りがあります。自由空間といいますか、遮蔽物がないところで測定しますと、15m〜20mくらい離れますと地面からの反射の影響を受けて、減衰します。ダイバシティ受信方式を使用して、高さに注意することが大切です。八木アンテナを使うとゲインは稼げますが(+6dB〜+10dB)、指向性が強いため取り扱いの注意が必要です。
一番関心があるのは、使用チャンネル数だと思いますが、A帯、A2帯とも9MHzの幅があり、125KHz間隔で71の周波数ポイントがあります。このポイント全部を同一の場所では使えないということを認識してください。せいぜい10〜12本くらいです。
・ ワイヤレスマイクを安定運用するには周囲環境に気をつける
近接使用の場合、それぞれの周波数を確認し、バッティングの危険を避けなければなりません。そのために連絡が必要になります。これは放送局さんのFPU(映像中継用機器)と同一周波数のため、お互いに連絡を取り合う義務があります。FPUはアナログとデジタルがありますが、出力は5Wで、A帯、A2帯の500倍(27dBの差)ですから、FPUのそばではまず使いものになりません。そのために特ラ連へ運用連絡を送り、確認する必要性があるわけです。
 使用チャンネルを増やしたいときにはチャンネルプランをたてます。チャンネルプランの基本的なことは、特ラ連のホームページからダウンロードすることが可能ですが、メーカーさんの表をお持ちの場合はそれに従ってやられるのもよいでしょう。
・ 仕込みワイヤレスマイクと音色の関係
ご存知のように、仕込み(2ピースタイプ)の場合、マイクは無指向性が多いようです。それを複数使うと、マイク間の干渉が問題になります。単一指向ですとそれほど問題は起こらないのですが、1つの音をある距離をもつ2つのマイクで拾うと干渉により周波数に変化が出ます。これをコムフィルター(櫛型フィルター)効果といいますが、グラフにするとよくわかります。これにより、音が痩せたり、分離が悪くなったりします。周波数に谷が出来たり、山が出来たりするわけです。しかし大勢の座談会など、いつ誰がしゃべるか分からない場合、空いているフェーダーは絞り気味にして一応全部上げておくという方法をとりますが、やむを得ないでしょう。しかし、音色に変化が出るということは認識しておく必要があります。
 
 (編集部:このあと、質疑応答がありましたが紙面の都合上割愛させていただきます)
                                まとめ  大野
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