中山氏取材分
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JPPAレポートより  

 特ラ連の関連団体であるJPPA(社団法人 日本ポストプロダクション協会)広報委員会の中山さんが事務局へ取材に見えました。JPPAはポストプロ業務の団体で、「JPPAレポート」2月号に特定ラジオマイク等を使用するプリプロの業務を紹介する意味で書かれたものです。「ラジオマイクと特ラ連」をどのように見ていただいたか、取材内容の同文を特ラ連レポートにも掲載させていただきました。
 中山亮一氏略歴
 東北大学電気科卒。NTV(日本テレビ)を定年。日本映画テレビ技術協会プログレス委員をつとめ、テレビジョン学会編用語辞典(映像情報メディア、旧版)、及び電子情報通信学会編用語辞典の編集幹事をつとめる。ピアノのテディ・ウィルソンや北村英治らと交流をもつジャズベーシスト。事務局長根本貞臣と私とは、録音録画協議会、JAPIL、JPPAの広報委員会以来の仲間である。        大野

1 映像と音声のからみで

 カメラマンにとってブームに下げられたマイクロフォンそのものやその影を撮影してしまう危険は常にあり、これは映像の質、作品のNGにつながる問題で、照明さんを含めブームマンは、お互いに辛い思いをします。大体はブームマンが叱られる羽目になってしまうようですが。良い音を確実に採取することは容易ではありません。
 さらに役者の動きが激しくされば直接の音録りは非常に困難になり、アメリカの映画製作では必要に応じて、セリフを全部アフレコで処理するとも聞いております。
 無声映画からトーキーへの移行を楽しくドラマに仕上げたのが、ジーン・ケリー主演のミュージカル映画「雨に唄えば」です。マイクロフォンをいかに画面から消すか苦労し、指向性や感度の問題で横を向けば音が消える、周辺のノイズあがどんどん入ってしまう、そして音質は極めて悪い等、それらの失敗の繰り返しが総て映画のストーリーとなって展開していたのですから、音に関心のある人々にとってまことに面白く、かつ感動的な歴史の一齣でした。

2 ラジオマイクの出現
 マイクロフォンと音声調整卓を結ぶケーブルは、音を扱う仕事に就いている者にとって、やはり誠に厄介なものです。苦労する点を挙げれば、マイクロフォンの位置が制限される、映像のなかにケーブルが入らぬよう注意しなければならない、ケーブルから誘導ノイズを拾う危険もある、出演者の動きが制約されてしまう等の例があり、これらは誰でもすぐに思い浮かべることが出来ます。
 ウォーキートーキーと呼ばれた無線電話が連絡用に使われはじめ、それを直接番組作品の音に流用した例があったようです。その後輸入品や日本無線(JRC)のラジオマイクが国内で使われ始めましたが、やはり真空管式であったため、ミニチュア管にしてもヒーター用の電池が別に必要で本体は大きく、重く、安定性に欠け使うのに苦労しました。
 次のステップでトランジスタ化、集積回路化による小型化が計られ性能も向上し、人工水晶による発信回路の安定性を獲得、周辺の温度変化にも耐え、普及しはじめさらに受信をダイバシティ−形式にして本当の実用段階に入ったといえます。
 とにかく動きの多いミュージカルでは、一つの舞台で約30本ものラジオマイクが使われるのも珍しくなくなり、モーターショー等では、出展各社に加え取材各社が別々にマイクを持ち込むのですから、その数は何十本にもなり整理はひと騒ぎになります。
また移動距離の長いマラソン、駅伝そして旅番組等では関係する箇所が多くなり連絡を密に細かくする必要が出てきます。
 更にコンサートなどのモニター用のワイヤレス・インイヤーモニター(法規上はイヤー・モニター用ラジオマイク)の使用も可能となって来ましたので音を扱う人は益々大変になってきています。

3 ラジオマイクの特性
 一般にはワイヤレスマイクと呼ばれる初期の製品では、まさに「雨に唄えば」の時と同様の思考錯誤の連続で、指向性を強くすれば周囲のノイズこそ拾わなくてすむけれどレベル変動は大きく、無指向性にすればその逆が出てくる。音質も悪く一番困ったのは使ったことが明瞭に解るので他のマイクロフォンとのバランスがとれない問題でした。現在これらの欠点は改良されてきていますし、便利さが先だって使用頻度は増加しています。発信波と反射波が打ち消しあうデッドポイントが存在しますし、電池をその都度新しくすれば不経済で、さりとて劣化していては役にたちません。更に出演者が電源を切らずにラジオマイクを着けたまま規定区域を出ていけば、他に混信妨害を与える危険が十分あり音声担当者の気苦労は常に大変です。

4 特定ラジオマイク利用者連盟の活動
 発足して11年目に入りますが2000年末現在で会員数は535社、会員の持つA型ラジオマイクは5740本に達しています。全国の推定本数は、A型は放送局と合わせて
1万6千を超し,B型にいたっては約67万本です。このように無線を利用したマイクロフォン利用者の急増に対し、お互いの干渉を避けて使用できる電波は限られていますので、いくら微弱な電波であるとはいえ混信、妨害の危険が常につきまといます。
 例えば東京の有楽町で野外のロケーションを行うプランを、連盟に加入のあるプロダクションが企画したとします。そばには日生劇場、宝塚劇場があるので移動用ラジオマイクの使用に関して年月日、使用予定時間、使用区域の住所番地、現地連絡者、周波数帯等を連盟に連絡します。連盟の事務局では距離を地図上で測定し、出力が劇場にも影響を与え、なお同一周波数帯となれば、日生劇場及び宝塚劇場と連絡のあった使用者へ必ず知らせます。
 とにかく誰がラジオマイクを使うか、それは何時で何処でなるとお互いに見当もつかないのは当然で、良い音の素材を制作するためには、そのあたりをコーディネートするセンターがどうしても必要になってくるわけです。
 今やこの連盟には、ラジオマイクの使用状況がデータとして集められてくるので、その情報は全国的に将来のより良き素材作り、運営に確実に役立つのみならず、機材そのものに関してデジタル化を含む新しいマイクの開発にも必ず寄与することでしょう。ポストプロダクションの側から、より高品質の素材を受けられるように応援する意味でも、NHKテクニカル・サービス、イマジカ、日本テレビ・ビデオ等が既に会員として参加しております。尚、現事務局長はJPPAの前広報委員長の根本貞臣氏、次長は同じく広報委員をされた大野正夫氏です。

5 使用電波の範囲と出力
A2型 779.125MHz〜787.875MHz 10mw (FPU2帯)
A4型 797.125MHz〜805.875MHz 10mw (FPU4帯)
放送局が中継に使用するFPU{注}の2帯と4帯を共用で使っています。
B型 806.125MHz〜890.750MHz 10mw
C型 322.025MHz〜322.150MHz 1mw
322.250MHz〜322.400MHz 1mw
A型は共用のため免許が必要です。B型では電波をより有効に使用するためコンパンダ(圧伸器)が義務づけられています。
{注}FPU(field pickup unit)用に割り当てられている4つの周波数帯は
1帯 770〜779MHz, 2帯 779〜788MHz, 3帯 788〜797MHz
4帯 797〜806MHz です。
ただし日本でFPUと言えば中継用の無線の送受信機のみを指しますが、英語ではカメラ、マイクを含む屋外中継用機器全体の意味です。

まとめ JPPA広報委員 中山 亮一