ちょっとブレイク

東京駅の復活がインパクトの強いニュースの一つとして話題になっていますが、レトロとは何か? というとWikipediaには次のように掲っていました。
 レトロ(Retro)とはretrospective(回顧)の略語。懐古趣味(かいこしゅみ)のこと。「徒に古い物を珍しがり懐かしむだけの単なるデカダンス」とも述べられる。
 単なるデカダンスと云われるとかなり違和感があり、懐かしさとか現代にも通用するといった趣きがなくなっているようにも思われます。

 先日、日比谷公会堂にでかけました。東京校歌祭という行事に参加し、これもまたできてからちょうど100年目の高校校歌を唄ってきました。
 この建物は昭和4年(1929)に建てられ、既に80年以上経過した建て物です。昔ながらの味わい深い趣がその形や色にあります。建築音響からすると、あとから建てられた上野の文化会館をはじめとする各時代の音響学の成果を盛り込んだ残響の長いコンサートホールに対しては見劣りがするようです。何しろ残響時間は0秒に近いそうですから。公会堂の設計は佐藤功一氏、特ラ連事務所の近くにある早大大隈講堂の設計者であり、早大の建築学科を開いた人物とのことです。大隈講堂のホリゾントは改築後の現在も80年ほど前と変わらず上部がドーム状に湾曲したクッペル・ホリゾントとなっていて、築地小劇場と同様の造りであると聞きました。劇場内で大空や周囲の景色を大きく広くみせる工夫がプラネタリウムとまではいきませんがそこにはあります。

 話は変わりまして、10年来いつか行かなくてはと頭の隅にあった国分寺の「ほんやら洞」。スナックというような感じですが、国分寺駅の南口を出て左に100m程度の坂の途中にあります。白い壁のマンションの一角、蔦に覆われた小さな店で、オーナーは70年代歌姫の一人、シンガーソングライターの中山ラビさんとのこと(まだ時折ライブ演奏をしている)。15人程度で満席になりそうな店内には懐かしさの込み上げてくる品々が所狭ましと置かれ、昭和に逆戻りしたような錯覚に陥ります。カウンターの前のスツールは、この店の創業時のメンバーで京都に暮らす知人の設計ではと思ったりして。ここのママさんはどこかで会ったような方、昼時だったのでスパイシーカレーの注文にテンテコ舞い、珈琲だけ頼むと嬉しそうな笑顔をみせてくれました。その昔(と言っても40年程度)、この店の道路を挟んだ向かい側には、あの村上春樹が学生ながら開いた店、ピーター・キャットがあったということです。運ばれてきた珈琲には昭和の香りと少々の酸味がありました。

(中島)