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平成21年度 情報通信月間参加行事セミナー報告A

かねてより、トヨタ自動車 株式会社様が行っております安全・安心のためのITSの取り組みについて、ご講演いただきました。ここに内容をまとめたのでご報告します。

〔ITSとは〕

 道路交通が抱える事故・渋滞・二酸化炭素(CO2)削減などの問題を最先端の情報通信(情報化)と制御技術(知能化)により、解決するシステムのことをいい、1996年当時、関係5省庁が合同で策定したITS推進に関する全体構想では、9つの項目を推進してきた。
  1. ナビゲーションシステムの高度化 : VICS等によるナビゲーションシステム高度化
  2. 自動料金収受システム : 料金渋滞でのノンストップ化
  3. 安全運転の支援 : 走行環境情報の提供、運転補助、危険の警告、自動運転
  4. 交通管理の最適化 : 交通流の最適化、事故時の交通規制情報の提供、適切な対応
  5. 道路管理の効率化 : 維持管理業務の効率化、特殊車両の管理、通行規制情報の提供
  6. 公共交通の支援 : 公共交通利用情報の提供、公共交通の運行・運行管理支援
  7. 商用車の効率化 : 商用車の運行管理支援、商用車の連続自動運転
  8. 歩行者等の支援 : 線路案内、危険防止
  9. 緊急車両の運行支援 : 緊急車両経路誘導・救援活動支援

〔サスティナブル・モビリティ〕

持続可能な交通社会の実現、いわゆるサスティナブル・モビリティの形成には、人、交通環境、車が三位一体となり取り組む必要がある。
事故の大半は見落としなど人的要因によるものが多く、車両に搭載されたレーダーやカメラなどで得られた情報を用いて安全運転を支援する自律型安全運転支援システムだけでなく、予防安全の視点から、人の判断に関わる部分を車とネットワークの技術でカバーする。つまり車の単体技術と、道路に設置された通信インフラ等のネットワークを組み合わせたネットワーク型安全運転支援システムと協調することで、事故削減効果の拡大をめざすことである。そのために、高品質な情報通信技術を用いた路車間(道路インフラと自車)通信、車車間(自車と他車)通信、人車(歩行者と自車)間通信により、ドライバーが直接見ることができない情報を、道路に設置された通信インフラや他の車両などから無線通信によって受信し、ドライバーに知らせたり、信号や他車両等の認知をサポートしたりして、判断ミスやルール違反を防止することで事故防止につなげるという、ITSを活用したインフラ協調による安全運転支援システムの実現することが必要である。

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これらにより、自律型安全運転支援システムなどでは困難であった、交差点・二輪車・自動車・歩行者事故対策に効果が期待できるが、そのためには、

  • 大容量でかつマルチパスや干渉を前提とした通信方式の確立
  • 一般道路上での使用環境に対応するため、回折効果が期待できる周波数帯の確保
  • 安全アプリケーションを実現するため、なりすまし、盗聴等を防止するオーバーヘッドの小さいセキュリティ(認証・暗号化等)機能の確立 などについて検討が必要となる。

〔環境問題とITS〕

  国内産業のうち、運輸部門からのCO2排出量は、2001年をピークに減少している。さらなるCO2削減を図るためには、日本の道路事情として特徴的な、

  • 欧米に比べ平均速度が低い。
  • 大都市部の渋滞 を改善することが課題であり、そのための交通流改善による渋滞解消、走行速度のアップが必要である。それには 
  • ETCゲートの整備拡大
  • 信号制御の高度化  感知情報から算出した交通指標をもとに、交通事情に応じて信号を制御し交通流を円滑化。
が必要である。

以上が講演の要旨です。
 講演後、特ラ連 田中専務理事の閉会の挨拶ですべて終了しました。来場された皆様には、途中退席された方がほとんどなく熱心にお聴きいただきましたが、内容の濃さに比べ講演時間に余裕がなかったことが、反省点として残りました。来場者は52名でした。

(青木)
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